更新日:2020.08.24
社長自らが経理を行う。
これは特に1~30人程度の会社ではよくありがちなケースかもしれません。
理由として、経理担当を雇う「余裕」がないということもあるのでしょう。もともと経理は「余裕」で雇う人材ではないのですが、売り上げを作らない立場ですので、特に開業したばかりの会社などでは、担当者をつけるのが難しい場合もあるのでしょう。そうなると、社長自身が経理を行うというケースも出てきます。
しかし経理の仕事を社長自らが行う、ということは会社にとって果たして得なことなのでしょうか。それとも逆に損なことなのでしょうか。
今回は、いまだ経理担者のいない会社の経営者の方々とともに、その利点、欠点を考えていきたいと思います。
<欠点>
・とても高いお金で経理作業をしていることになる
経理担当者を自社で雇ったり、外部に依頼するとコストがかかります。これが経営者自身が経理を行うことになる最大の理由でしょう。
例えば経理専門のスタッフを雇えば、最低でも月10万円~20万円の費用がかかります。年間にすれば決して少ない金額ではありません。
経理を自分でおこなえば、この経費が「節約」できる、と考えれば、自分で行うという選択肢も有り!なようにも思えます。
しかし、この際つい忘れがちなのがこれを社長自らが行うと考えたときの、自らの人件費です。
例えば、月の役員報酬を160万円と考えてみましょう。すると160万÷20日÷8時間=時給1万円となります。
時給1万円の社長が1日1時間経理の仕事をしたとすると、単純計算で月に22万円ということになります。
つまり月10万円~20万円の費用を節約するため、22万円の経費を使っているということになります。
自分の時給は2万円程度、という場合はこの倍になるわけです。
これではとても節約とは言えません。
・経理作業の間、社長の仕事が止まる
経理の仕事をしている間、社長としての仕事はもちろんストップします。
つまり営業も商談も、社長が行うべき仕事もストップしているということ。
つまり、売り上げを上げるための作業が停滞していることになります。
1日8時間のうち1時間が費やされると考えれば、1割以上の部分の活動の時間がそがれていることになります。
・ミスが起こる
社長自らが経理作業を行うと、どうしても作業の優先順位が変わります。
本来、経理の作業の最優先事項は「正確さ」です。早さよりも正確さが大切です。しかし、社長自らが行う場合、限られた時間で行う必要があるため、どうしても早く作業をすますことが優先されます。つまりミスが起こり安くなります。しかも、社長しかお金を見ていませんので、ミスを発見しにくく、同じミスが繰り返されることにもつながります。
・書類がたまる
社長が自ら経理を行う場合、どうしても作業は滞りがちになります。
毎日1時間、決まって作業ができればいいのですが、どうしても週に1度、下手をすれば月に1度作業を行うということにもなりがちです。
すると、領収書や伝票はその間「未決」「未処理」のまま放置されます。つまり会社の状態を正確に把握するための大切なお金にまつわる数字があやふやな日々が大半という状況になってしまいます。
つまり会社の状況がわからないまま働き続けることになるわけです。
<利点>
・会社のお金の流れが分かるようになる
社長自らが経理を行うことは、欠点ばかりではありません。
自らがお金の状態を把握することで、会社の売上や仕入、経費など日々の数字を社長が性格に把握することができるようになります。
また社長が経理をするということで、無駄な経費の計上が非常に少なくなり、また社員からの経費の計上が迅速になる効果も期待できます。
・仕事ごとの利益の判断がしっかりできる
社長業だけを行っていると、仕事を発生させる、つまり営業的な部分だけに目が行きがちです。しかし売り上げだけでなく、経費、外注に関しても社長自らが把握することで、一つ一つの仕事がどう利益を生んでいるのかがわかり、仕事を受けるべき、受けないべき、というこれまでになかった視点が生まれます。
・税理士さんの話や考え方が理解できるようになる
社長が自ら経理をしていると、税理士さんにもしっかり数字を把握したうえで様ざまなことを相談できたりします。さらに税理士さんからのある程度専門的なスムーズに理解できるため、税理士さんの能力を最大限に生かすことができます。
<一つの結論として>
社長が、社長本来の活動をストップさせてまで経理の仕事を行うのは、やはり問題があると考えたほうが良いでしょう。しかし、経理担当と税理士さんに任せきりというのも、大切な会社の数字を理解しておかなくてはならない立場として、これもお勧めできません。
煩雑な入力作業などは経理担当者に任せ、常に数字に興味を持ち続ける。このためにも、一時的には経理の仕事を自分でやってみる。そして理解したうえでひとに任せるという方法もよいかもしれません。