更新日:2020.08.24
会社は、通常1年間の期の中で、会社の経営成績や財政状態を計算します。これが決算です。この当期の中で様々な経費などを会計処理するとき、どの時点で経費が使われたかを判断する基準があります。会計の発生主義と現金主義という二つの考え方で、多くの場合、発生主義が用いられています。
現金主義とは?
発生主義についてお伝えする前に、まずもう一つの考え方である現金主義についてご説明したいと思います。
現金主義とは、現金の受け取りや支払いがなされた時点、つまり現金が動いた時点で会計処理をするルールです。家計簿に近い感覚かもしれません。
この現金主義のメリットは、現金の移動だけを記録しておくため、取引の管理に対する手間が少ない点があります。またシンプルなやり取りの管理なため、不正もおこりづらい点なども挙げられます。
この場合、収入=収益、支出=費用ととてもシンプルなものになります。
ただ欠点もあります。現金主義で現金が動いた時点での処理のため、企業の実際の活動の記録がつけにくいという面があります。
例えば、商品を入手し、支払いは後日といった場合、現金主義だと商品を入手した日と、お金を払った日がずれてしまいます。
また、商品を「掛け(支払前に商品を渡す)」で売った場合、商品を売った日と現金で支払いを受けた日も違ってしまいます。
これが期をまたいでしまったような場合、正しい損益計算書ができなくなる場合があります。
現金主義でのみ会計を行うと、収益があるにも関わらず、お金が動いていないから書面上は赤字であるかのような結果になってしまうこともあります。
発生主義とは?
発生主義とは、現金のやり取りではなく、取引が発生した時点で費用と収益を計上するものです。
売上の収入や、費用の支出額が確定した時点の日付で帳簿をつけます。例えば、仕入れたけれど支払いは来月、売ったけれど入金は来月、といった場合でも、金銭のやり取を待たず、取引が確定した時点で計上する形になります。
企業で採用されている会計方法のほとんどは、発生主義会計によって行われています。
発生主義は現預金の支出・支払ではなく、支出および収入の必要性(=約束)が発生した期間に計上する必要があります。
そのため現金の動きとは異なるものとなり、発生主義の会計処理では、必ずしも収入=収益、支出=費用が成り立つとは限りません。
それでも企業において発生主義による会計処理が行われているのは、期ごとの企業活動の成績が発生主義の方がきちんと評価できるためです。
現金主義では支払いが遅れたり、何年も使う機器の設備投資をしたりすると、現金だけの評価であるため、企業の業績を正しく評価できません。
現金主義と発生主義で利益が変わる
現金主義と発生主義では、利益に対する考え方、数字も変わってきてしまいます。
例えば、同じ100万円の仕事をし、仕入れや運送のための車を購入した、と言った場合。車両費の部分で大きな違いが出てきます。現金主義では車両を購入した場合、その場で全額分の現金の支払いが記録され、売上から引かれることになります。
これに対し発生主義では、その後も利益を生むための会社の業務に使用する車両代金は、使用可能期間に応じた額を減価償却していきます(この場合、仮に5万円としています)。すると同じ100万円の仕事をしたにも関わらず、利益に大きな差が出てきます。
現金主義
発生主義
企業の活動の実態を正しくみるという点では、後者の方が正しい判断ができるといえるでしょう。