更新日:2020.08.07
1.請求書に印鑑は必要?
結論から申し上げると、請求書へ印鑑を押す必要はありません。法的に見ても、「印鑑が押されていないから正式な文書ではない」といったことは一切なし。そのため、請求書への押印を忘れたとしても、法的な問題になるということはありません。
さらに言えば、そもそも請求書発行自体が法律で定められているものではありません。コンビニでの買い物や、公共料金の口座引き落としで請求書が発行されないのは、このためです。
ただし、ビジネスにおいて、口頭での請求はトラブルの元となります。こうしたリスクや利便性を考慮し、ビジネス上では請求書の発行が習慣となっています。
その理由のひとつは、押印によって発行者の証明が行えるという点にあります。受け取った側にとっても、押印されていることで文書の信頼度が高まり、スムーズな取引が行えます。また、印鑑がない請求書を受け付けないとする企業や官公庁も存在しているため、押印をデフォルトとするのが無難とする見方もあります。
もうひとつは、請求書改ざん・偽造リスクの防止です。印鑑のイメージを複製するのは、文書複製に比べると技術的なハードルが高くなります。加えて、押印がされた文書の改ざん・偽造は、押印なしに比べて罪が重くなるため、犯罪への抑止力が高まるのです。
2.請求書にはどんな印鑑を押せばいい?
【法人編】請求書に押す印鑑の種類
法人が用いる印鑑にはいくつかの種類があります。この中で、請求書に多く用いられるのは「角印」と呼ばれる正方形の印鑑です。
角印は印鑑登録がされておらず、種類としては「認印」に分類されます。法的効力はありませんが、書類に対して発行者が“確認”や“承認”を行った証となります。なお、同様の理由で「シャチハタ印(ゴム印)」でも効力は同じです。
一方、「丸印」と呼ばれる円形の印鑑は、法務局で印鑑登録が行われた「実印(代表印)」として扱われるケースが多い傾向にあります。実印は 1社につき 1本という原則があるため、より重要な契約や取引の際に用いられています。そのほか、銀行口座開設時に金融機関へ届け出る「銀行印」も存在します。
なお、丸印や銀行印を請求書に押印しても問題はありませんが、重要な印鑑を多用すると、摩耗が早くなったり、紛失リスクが高まったりする原因となるため、避けるのが一般的です。
ちなみに、書類などの書き損じを訂正した際に押す「訂正印」は、請求書では用いません。記入ミスなどがある請求書は、再発行することが原則です。どうしても訂正が必要な場合にのみ、訂正印を用いましょう。
印鑑は画像データでも大丈夫?
最近では、請求書の確認に画像データを用いる企業も増えてきています。押印ではなく印鑑を印刷するという方法ではあるものの、前述のとおり、角印(認印)には法的効力はありませんから、スキャンした印鑑を用いても効力は同じです。
さらに言えば、画像編集ソフトなどで作成した印鑑であっても構いません。請求書への押印はあくまでも発行者である証であり、それが証明できるのであれば印影に決まりはないと覚えておきましょう。
ただし、中には画像データを用いた印鑑を不可とする会社もあります。こうした場合に備え、事前に請求先へ確認をしておくのがおすすめです。
【個人・フリーランス編】請求書に押す印鑑の種類
個人事業主やフリーランスの場合、法人のような「丸印」や「角印」を用いることは稀です。そのため、請求書には普段から用いている印鑑を使うのが一般的です。
ただし、信頼性を高めるために事業用の印鑑を用意しておくのもおすすめです。また、屋号で活動されている場合は、その名称の印鑑を作っておくのもよいでしょう。
3.請求書で印鑑を押す位置はどこ?
請求書における押印位置に特別な決まりはありませんが、ある程度のマナーがあります。
まず、請求書のフォーマットに捺印欄があれば、そちらを優先しましょう。捺印欄がない場合は、会社情報(社名・住所・電話番号など)の右側を定位置とするのが一般的です。なお、この際には文字に被せるように押印を行いましょう。社名と印鑑がセットになっているという意味に加え、請求書が改善されていない証明になります。
また、これは請求書に限ったことではありませんが、押印時には印影がきれいに残るよう注意してください。大きなかすれや欠けがあるものは提出を控えましょう。
請求書に印鑑を押すのは、日本における一般的なビジネスマナーです。
法的効力はなくても、改ざん・偽造防止に有効である点はメリットとも言えるでしょう。
「捺印欄、もしくは会社情報の右に角印をきれいに押す」
押さえるべきポイントは上記のみ。請求書作成の際には、ぜひ思い出してください。