更新日:2020.12.24
激動の2020年ももう残りわずか。
昨年5月、「令和」がはじまり新しい時代の訪れに、心躍らせテレビにかじりついたのも束の間。今年2月から始まった新型コロナウイルスの対応に追われ、あっという間に年の瀬の足音が迫ってきました。
年の瀬といえば、あちらこちらから聞こえる一年を労う「カンパイ!」の声。
今年はどこも自粛ムードで大きな忘年会を催す企業様は減っていますが、激動の1年間の労いをしたいと思う方は多いはず。
今回はいつもと違うカタチの労いや、新年の祝いを考えておられる方へ、さまざまな場面で登場する交際費について見ていきましょう。
交際費とは何なのか?
太古の昔から、呑めや歌えのお祭り騒ぎが好きな日本人。大口顧客との商談もこうした飲み会で話が進んだという経験はサラリーマンなら誰もが一度は持つ体験であるでしょう。海外には交際費の経費性を認めていない国もありますから、このような日本人の特性に配慮して、法人税の計算上も交際費の経費算入が認められているのでしょう。(実際に景気刺激策として、政策的に交際費の枠が拡大されたケースもあります!)
会社の経費について定めた法人税法には、交際費について「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」と定義しています。
すなわち、交際費に当たるか否かは、相手先との関係性が問題となるのです
事業に関係あるのはどこまでの人?
では、どこまでが事業と関係がある人との会食となるのでしょうか?
会食の場がそのまま商談の場となっている場合のみならず、見込み客との会食、特定の事業のために直接必要となる情報収集に係る会食なども事業に関係あると言えるでしょう。
しかし、交流会や勉強会、忘年会や新年会などといった名目の飲み会は「事業に関係ある」とは言い難い部分もあるでしょう。したがって、こういった名目の飲み会はその飲み会と自社の売上との関連性を整理し、説明できるようにしておく必要があるので注意が必要です。
高級クラブやキャバクラの領収書は経費になるのか?
大人数でのパーティーが自粛される中、特別な取引先だけでも、と思われる方もいらっしゃると思います。
取引先との商談の場に、高級クラブやキャバクラなどを利用するケースもあるでしょう。こういった領収書であっても交際費には該当します。
高級クラブやキャバクラは、いわゆる風俗店などと異なり、会話を楽しむための空間ですから、そこでの商談があれば、当然飲食店などの交際費と同様の基準で交際費として認められるのです。
しかし、こういったお店での支払いは、飲食店の支払いと比較して高額になりがちです。
それでは、いくらくらいまでが許容できる金額なのでしょうか?
実はこれには明確なラインがあるわけではなく、あくまで「社会通念上」妥当な金額までとしています。そんな曖昧な言い方をされても…と思うかもしれません。しかし、高いか安いかの概念は、その人やその会社の社会的立場、業界の平均など場合によりけりなので、金額で明確に定められるものでもないのです。ただし、一つだけ言えることは、常識的に考えて、その交際費に見合うだけの売上が生じる見込みがなければ、その支払いは行わないだろうということです。この点が税務調査の際にも争点になるので、意識しておく必要があるでしょう。
参考までに・・・パーティーチケットの取扱い
特に、政治家の主催するパーティーのチケット代は、たとえその政治家と仕事上の付き合いがあったとしても交際費にはならない場合があります。パーティー券は、そのパーティーに参加しなくても購入するケースがあります。これは、パーティー券がそのパーティーの参加費というよりも、その政治家や政治団体の資金集めのために販売されるためです。したがって、そのような場合、寄付金のような性質を持つものであり、事業に関係あるとは言えないからです。ただし、実際にパーティーに参加し、情報交換などが行われていれば交際費となりますから、参加の有無が明確にわかるようにしておくとよいでしょう。なお、チケットが実際にパーティーに参加した参加費となっている場合には、消費税の計算上も課税対象仕入として処理できますが、寄付金と同様の場合には不課税取引として考慮されないという違いもありますので注意が必要です。
白紙領収は犯罪行為
それでは、白紙の領収書を受け取り、受取人が自ら書き込むケースはどうでしょう?
このケースは当然のことながら認められません。
税務署は空領収(白紙の領収書に適当な金額を記載したもの)と疑わしいものについては、発行元の事業者に実際の支払額の照会をして、実態を調べます。その際、実態のないことが判明された場合には脱税行為とみなされます。
仮にお店側から白紙のものを渡され、自分で記載するよう指示されたとしても、白紙の領収書に発行者以外の者が記載することは文書偽造に該当し、立派な犯罪行為となってしまうのです。誤解を招かないようにするためにも、必ずお店側に記載を求めて発行してもらいましょう。
日本において、交際費は事業を円滑に行うために、もはや欠かせない経費となっています。
しかし、公私混同が起きやすい経費でもありますから、経費性をきちんと説明できるよう細心の注意が必要です。
使い方に注意して、年末年始を楽しく乗り切りましょう!