連載コラム 経理の疑問にお答えします
会社の健康診断、経営分析で健康状態を把握しよう

会社の健康診断、経営分析で健康状態を把握しよう

作成日:2021-03-15
最終更新日:2021-03-15

仕事終わりのひとときにゆっくり楽しむアルコールタイム。
日頃のストレス解消に・・・とついつい飲みすぎて、気づけばいつの間にかのメタボ腹。
そして、やってくる健康診断の数値におびえたり、ほっとしたり。
健康診断そのものは、面倒に感じても数値で見ることにより、具体的に何を鍛えるべきかがはっきりします。
これは、企業も同じ。B/SP/Lといった財務諸表に限らず、今会社が健全な状態であるかを見極める経営分析に関する指標があります。あなたの会社は今健全でしょうか?
財務諸表があれば誰でもできる簡単な指標を使って確認してみましょう。

 

会社の健康状態を図る3つの指標と最も基本的な指標

 

 会社の健康状態は一般的に「収益性」 「安全性」 「生産性」の3つの指標で図ります。
 「良い会社」とはなんでしょう?株主の立場から見ると「良い会社」とは儲かっている会社ではないでしょうか?「売上が昨対比で10%も増えているから儲かっているんだ!」・・・そんなふうに経営者としては思いたいところです。しかし、売上の増減だけを見ていたのでは赤字を垂れ流している瀕死の状態に気づかないなんてことも。

 

 もっとも簡単に算定できる収益力の指標は、P/L記載の売上高に対し、計上されている利益が何%かで確認します。
 このうち、一般的に「粗利」といわれているものは「売上総利益」といって、売上高に対する売上原価の割合を言います。

 

 これは単純に商品を買って売ったら手許にどのくらいの利益を残せるかということを現します。売上総利益は、すべての経費を引く前の割合なので、この割合が高いと人件費や他の経費に掛けられる割合が低くなってしまいます。

会社の稼ぐ力、「収益力」を算定しよう

 

 さらに、会社の収益力を算定するには総資産利益率(ROA)または株主資本利益率(ROE)という指標も用います。ROAやROEは、「資本に対し、どの程度の利益を上げているのか?」という指標です。

 

 下記の算式のうち、総資産とは、負債と純資産の合計であり、B/Sの左右の合計額を指します。これは、会社の調達した資金(元手)を指します。これに対し、株主資本とは、純資産のうち、株主の拠出した資本金や利益の積み立て部分など借入以外の部分を指します。

 

 つまり、この割合が高いほど元手から効率よく収益を生み出せていることとなるのです。

 

 また、ROAを分解すると、利益率と回転率に分かれます。

 

 回転率とは、総資産に対する売上高の割合です。すなわち、この回転率が高くなると多くの資産を使って多額の売上を生み出す薄利多売のビジネスモデル、回転率が低いと利益率をブランド品の販売のように高価なものを高値で販売するビジネスモデルです。

 

 収益力を高める方法はビジネスモデルによっても異なるため、自社のモデルに即した方法を検討することが重要です。そのため、同業他社との比較などにより自社の収益力が高いか低いかがわかります。

 

 このように、自社のビジネスモデルによって目標とする数値が異なるので、あらかじめ目標となる数値を決めて毎年モニタリングしていくことが望ましいでしょう。

「安全性」を高めて強い会社にしよう

 

 次に「安全性」について見ていきましょう。
 会社の安全性を図る指標として、真っ先に挙げられるのが自己資本比率です。

 

 これは、「総資本のうちの自己資本の割合」を指します。
「自己資本」は先ほどの「株主資本」に近い概念で、株主によって出資された部分や利益の積み立てによる部分を言います。これに対して、総資産のうち、借入れ等により調達された部分を「他人資本」といいます。

 

 他人資本は返済しなければなりませんから、自己資本比率が低い会社は、将来返済すべきお金が多く、安定しているとはいえません。

 

 さらに、黒字倒産を起こさないためには、「明日を安全に過ごせるか?」も重要なポイントです。すぐに換金できる資産をどの程度保有しているのかを現すものが、「流動比率」や「当座比率」です。また、設備投資の適正さを判断する指標が「固定比率」や「固定長期適合率」です。

 

 このようなさまざまな視点から分析される安全性とは、「無理のない資金調達ができているのか?」を意味します。このように、資金調達を行う際は、長期的な安全と短期的な安全のバランスを取っていくことが重要なのです。

 

今、最も注目のワード「生産性」

 

 最後に今最も注目されている指標が「生産性」です。
 これは「労働生産性」言葉で表現されるように人件費に着目した指標です。

 

 企業が生み出した「付加価値」に占める人件費の割合を見るのが「労働生産性割合」です。付加価値とは、売上と原価の差額であり、その企業の生み出した価値を指します。

 

 たとえば、木になっているリンゴを売る、という単純な商売を考えた時に、このリンゴを青森の農家が配送して東京の市場で売れば、リンゴを育てていない地域でもリンゴが食べられるという価値が生まれます。
さらに、これを東京の市場で買った果物屋が、きれいな箱に包装して売れば、贈答品になるという新たな価値が生まれます。

 

 このように、単に「リンゴを売る」という単純な行為でもニーズに合わせてつけた新たな別の価値が付加価値なのです。

 

 労働生産性は、この付加価値を何人で生み出したのかを指します
 業務効率性を上げ、経費が少なくなれば、少数人で多額の利益を生み出すことが可能となります。これにより、一人当たりの賃金を相対的に高くできるのです。

 
  
 

 分析指標はまだまだたくさんあります。
 しかし、大事なことは健康診断と同様に小まめにチェックすることです。病気を早めに見つけ、手当することでいつまでも健全な企業でいられるのです。