作成日:2021-03-10
最終更新日:2023-02-24
会社の決算手続きの最後を締めるのが株主総会。経理上の利益は決算の作業が終了すると確定します。しかし、手続き上は株主総会が終わらなければ確定したことにならないのです。
今回はこの株主総会の目的と具体的な手続きについて確認していきましょう。
株式会社は事業家と資産家のマッチング
株主総会の具体的な内容に入る前に、株式会社の制度について簡単に触れておきましょう。
ある事業家が「こういうサービスを作りたい」「こういうものを作りたい」といった事業を計画したときに、手許の資金では目的が達成されないケースが多々あります。
世界を変えるようなサービスを開発した事業家自身が資産家であるとは限らないからです。その一方で、資金に余裕がある資産家は、自身の資金を何とか役に立て、利益を得たいと思うでしょう。
株式会社は、こうした事業家と資金のある資産家を結び付けてその事業を大きく発展させることができる制度です。具体的には、会社の事業を行う経営者を代表取締役(役員)、資金を捻出する者を株主として会社の経営と所有を分離することができるのです。
株主総会の役割
こうして、会社の経営と所有が分離された中で、会社の経営者は与えられた権限の中で事業を運営し、利益の最大化を目指します。
その際、株主は経営者から経営に関する報告を受けます。これが株主総会の役割です。
株主総会は、法律上、決議事項があればいつでも開催できますが、これとは別に、決算報告のための定時の株主総会を事業年度終了後に開催しなければならないこととされています。
通常は決算日から3か月以内に行うよう、会社の定款などで定められることが一般的です。日本で最も多いのは、3月決算の法人であるため、6月中に集中して株主総会が行われるのです。
株主の確定
それでは、株主総会を開催するためには、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか?
株主総会を行う前段階の準備として、株主を確定する作業があります。
会社の株主は、備え付けが義務付けられた「株主名簿」に氏名が記載されることにより権利を有することとなります。
しかし、公開会社のように、日々株主が変わる場合もあり、株主名簿をタイムリーに更新することは難しいのです。
そのため、基準となる日を決め、その日現在の株主に限定して招集を掛けます。この株主の確定日は、一般的に決算日現在の株主とされます。この段階の株主名簿をもとに株主総会の招集を行います。
株主総会の招集は原則「書面」!
株主を確定したら、会社は確定した株主全員に株主総会開催日の2週間前(非公開会社は1週間前)までに、株主総会の招集通知を発送します。
招集通知は原則として「書面」を送付して行います。ただし、あらかじめ株主の承諾がある場合には、メールやウェブサイトによる方法などで決議を行うことができます。
しかし、前述のとおり、こうしたウェブなどを前提とした招集は会社の独断で決めることができません。また、自然災害や新型コロナなどにより、テレワークが推奨される環境の中、必ずしも予定通りに株主総会が開催できるのかはわかりません。
そのため、招集をメールなどの方法で簡単に行うことができればよいのですが、事前の承諾なくこういった方法を使うことは法律上認められていません。
不測の事態に備えて対応を検討しておくことは、今後必要となってくるでしょう。
株主総会では何をするのか?
それでは、実際に株主総会が開催されたら何を行うのでしょうか?
株主総会の招集通知には、事前に「計算書類」と「事業報告」を添付する必要があります。「計算書類」とは、一般的な言葉で「決算書」と言われるものです。「事業報告」は会社の現況や役員などの報告など、会社の体制や運営方針、現況などに関する説明です。
株主は、事前にこれらの資料を読み、会社の経営状況を把握したうえで「計算書類」の承認、否認の判断を行い、株主総会に参加します。
計算書類は、貸借対照表や損益計算書など、会社のその年の経営成績を数字化したものです。この成績により、株主には配当金として利益の分配が行われます。利益が大きく出ればよいのですが、損失が出てしまったときは、事業報告の内容や株主総会における取締役からの説明を受けて経営に問題がなかったかを判断しなければなりません。
このように、計算書類の承認作業が定時株主総会の最も重要な決議事項であり、この承認可決をもって「決算が確定」したということになります。
会社にとっては一年を締めくくる一大イベント。それが株主総会なのです。