作成日:2021-09-09
最終更新日:2023-02-24
スポーツの秋、食欲の秋、行楽の秋・・・
うだるような夏の暑さも一息ついたこの時期には、コロナさえなければ会社主催のイベントが予定されていたという企業も多いことでしょう。
今回はそんな会社の福利厚生に関するお金について見ていきましょう。
健康診断の受診は会社の義務?会社はどこまで受診させるの?
秋の夜長につられて遅くまでの暴飲暴食、体重が少し気になり始めても自分ではなかなか気の進まない・・・そんな人も多い年に1度の定期健康診断。実はこれ、労働安全衛生法という法律に定められた会社の義務として会社負担で受診させなければいけないこととなっています。
健康診断は、病気の治療と異なり健康保険の適用がありません。そのため、検査内容によっては高額になってしまいます。それでは、どこまでが会社負担にすべき費用なのでしょうか?
福利厚生費の基本的な考え方
ここで会社の経費に関する決まりごとが書かれている法人税法における福利厚生費の考え方をまず整理しましょう。
ここでのキーワードは「公平」。すなわち、会社の誰もが等しく同じ権利を得られれば経費性がある、なければ特定の人に対するボーナス(給与)と考えます。
たとえば、社内規程で一般社員は一般的な健康診断しか受けられないけど、役員だけは高額な人間ドックでしっかり検査が受けられる・・・こんな状況であれば役員という立場の人を優遇している規程になるので、この人間ドック費用は福利厚生費としては認めませんといった具合です。
高額であれば経費性がないのか?
それでは、高額な人間ドック費用はすべて福利厚生費として認められないのでしょうか?
もちろん、社員全員が同じ人間ドックを受診できるのであれば公平に利益を得られるでしょう。しかし、必ずしも全社員じゃないといけないというわけではなく、「ある一定条件に該当した人全員を対象とする」といったケースもこの「公平」に当てはまります。
自治体が行う検診と同じように「ある一定の年齢に達したら」受診できるようなケースがこれに当たります。
ただし、そうはいっても豪華な食事が出てくるなど、その費用自体が社会通念上、高すぎるものであれば、「そもそもその支払いに経費性があるのか?」という問題になってしまうので難しいところです。まあ、一般的な人間ドックの相場程度であれば・・・と理解しておくとよいでしょう。
社員旅行の費用はどこまで福利厚生費で使えるの?
それでは、会社が主催する社員旅行の費用に関してはどこまでが福利厚生費として認められるのでしょうか?
社員旅行などのレクリエーション費用に関しても原則的には「公平」の考え方に則りますが、健康診断に比べてもう少し要件が細かくなります。
具体的には次の2つの要件を満たす必要があります。
- 旅行の期間が4泊5日以内であること。
- 旅行に参加した人数が全体の(部署の旅行であれば部の)人数の50%以上であること。
なお、1については海外旅行の場合、海外での滞在期間が4泊5日以内であれば要件を満たすものとされます。
みんなが参加したい社員旅行を企画しよう!
上記要件のうち、特に問題になるのが2の「旅行に参加した人数が全体の(部署の旅行であれば部の)人数の50%以上であること」という要件です。
社内にはさまざまな家庭の事情を持った従業員がいます。特にプライベートと会社の行事のバランスは、近年ではなかなかセンシティブな問題です。
それでは、せっかく旅行を企画したものの50%の基準を満たさなかった場合にはどうなるのでしょうか?
この場合には、旅行に係る一人当たりの旅費負担分がそのまま参加した社員のボーナス(給与)となってしまうのです。
せっかくの社員旅行ですから、余計な心配やわだかまりがなく、上司や同僚たちと楽しい時間を過ごしたいものです。社員旅行の幹事さんは楽しい企画でなるべく100%参加を目指しましょう!
お金で解決できるのか?
また、仮に参加しなかった社員には参加費と同額の金銭の支払いを行ったらどうでしょうか?この場合には、50%の基準を満たすか否かに関わらず必ず給与とされてしまいます。これは、参加した社員に対しても給与となってしまうので、注意が必要です。
お金で解決できないことは・・・「ある」のです。
せっかくの福利厚生ですからね。
また、取引先と接待旅行や役員だけの研修旅行などは福利厚生費としては認められませんが、社会通念上、一般的な旅行の範囲であれば交際費や研修費などの別な形での経費として認められます。
福利厚生費は社員のやる気を高め、一致団結して業務に励むための大事な費用です。
しかし、会社の経費で行うからには「特定の誰か」ではなく、「みんなの」利益になることが重要なのです。そのため、社内規程で明示するなどみんなの権利として誰もがわかるように運用することも重要でしょう。
福利厚生費を上手に使って、活気ある会社作りを目指していきましょう。