連載コラム 経理の疑問にお答えします
経理のプロでも理解不能?!複雑すぎる年末調整の怪

経理のプロでも理解不能?!複雑すぎる年末調整の怪

作成日:2021-09-09
最終更新日:2023-02-24

経理業界を騒がす年末調整。計算自体は外部事業者に委託しているという会社も増えているものの、年々増え続ける資料に辟易している人も多いでしょう。
そして令和2年の大幅な法律改正によりさらに提出書類は複雑化し、現在では経理のプロでも計算が難しくなっています。
今回はこの年末調整について見ていきましょう。

 

年末調整は税金の清算?!

 

 会社員は会社からもらう給料からその年分の所得税の見積額の税金が天引き徴収されます。この給与から天引きされる税金を「源泉所得税」といいます。この源泉所得税は、名前のとおり、所得税の一種です。
 所得税は給料だけでなく、年金や事業収入、不動産の賃貸料、株の売買など個人のその年の収入に対し、課税される税金です。そのため、通常は前年分の収入の情報を集め年明け3月15日までに確定申告を行って納付します。
 しかし、給料をもらう会社員は、その会社からの給料以外の収入がないことが多いことから、会社がその人に代わって税金の計算を行います。
 このときに正しい税金の計算はたくさんの個人情報が必要なので、いったん見積もりの税金で月々の給料から集めておき、年末に正しい税金を算定して差額の精算を行います。
 これが年末調整です。

 

年末調整の計算と計算に必要な個人情報

 

 次に税金の計算方法を見ていきましょう。
 給料に係る所得税の計算は、計算のベースとなる会社の給料から、まず、収入額に応じて一定の「給与所得控除額」を控除します。これは、給料を得るための経費相当額と言われていますが、一定の非課税額と考えればよいでしょう。この控除後の金額を「所得」といいます。
 さらに、そこから「所得控除」というものを引いていきます。
 税金の支払いは義務であり、支払いができないほどの高額の税金を国が徴収するわけにはいきません。
 そこで、その人個人の生活に合わせて、税金の対象額の減額を行うため、扶養親族の年齢や、障害者に該当するかどうか、配偶者の収入状況などを考慮したさまざまな所得控除が設けられているのです。
 なお、令和2年度からは、これまでひとり親の控除を配偶者の死亡などの一部の理由でしか認めていませんでしたが、公平さを欠くことから未婚のひとり親に対しても控除を拡充するよう法改正が行われました。

 

改正によって損する人、得する人

 

 さらに、令和2年の法改正では、給与所得控除額のうち、高額所得者(収入の多い納税者)の控除率が相対的に高くなることから、これを一定収入以上の収入額がある場合にはこの控除額を減額し、その代わりこれまで納税者全員が一定額を控除していた「基礎控除」という控除を増額する制度を導入しました。
 しかし、この基礎控除額も収入の増加とともに、控除額が減額される制度も併せて導入されたため、改正後の税金は前年に比べ、税金が増える人と減る人が出ることになってしまい、特に高額所得者にとっては大打撃となる改正なのです。

 

いよいよ計算不能?大混乱の令和二年の乱

 

 ところで、毎年、年末が近づくと、年末調整のための書類が総務部署などから配布され、保険会社の証明書類や住宅ローンの書類などと一緒に提出するよう求められますが、こうした、紙によるやり取りによる業務のムダが近年話題に上っています。
 年末調整も紙で従業員からもらった情報をソフトに入力し、税額の計算を行います。
 しかし、こうした情報も保険会社などが持っているデータを直接データで受け取れれば作業効率が上がることから、マイナンバーを介したデータでの年末調整の電子化の制度が令和2年より始まります。
しかし、この制度は会社でまとめて処理を行うことができるわけではなく、個人個人が自分で年末調整用のソフトをパソコンに落とし、データの収集処理を行わなければなりません。
 したがって、全従業員がこうしたデータの処理ができなければならず、ハードルが高い制度であり、簡単に取り入れられる制度ではなさそうです。

 

年末調整もデジタルに??

 

 ところで、毎年、年末が近づくと、年末調整のための書類が総務部署などから配布され、保険会社の証明書類や住宅ローンの書類などと一緒に提出するよう求められますが、こうした、紙によるやり取りによる業務のムダが近年話題に上っています。
 年末調整も紙で従業員からもらった情報をソフトに入力し、税額の計算を行います。
 しかし、こうした情報も保険会社などが持っているデータを直接データで受け取れれば作業効率が上がることから、マイナンバーを介したデータでの年末調整の電子化の制度が令和2年より始まります。
 しかし、この制度は会社でまとめて処理を行うことができるわけではなく、個人個人が自分で年末調整用のソフトをパソコンに落とし、データの収集処理を行わなければなりません。
 したがって、全従業員がこうしたデータの処理ができなければならず、ハードルが高い制度であり、簡単に取り入れられる制度ではなさそうです。

 

(出典:国税庁「年末調整手続の電子化概要図」
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/nencho_gaiyo.pdf
 

 

 このように、法律も制度も複雑化した年末調整は、電子化の制度ができても企業にとっては、残念ながら年々業務負荷が高い業務となってしまっています。
 そのため、制度をいち早く理解して、早めに対応できるようにスケジュールを組んでおくことが楽しい年末年始を迎えるためには必要なのです。