作成日:2020-07-22
最終更新日:2023-02-24
Q:あなたの会社は、以下のどちらですか?
[1] ミスが発覚すると、すぐにも「誰が悪いんだ!」と、犯人捜しが始まる
[2] ミスが発生すると、関係者でその原因を突き止め、ミスの発生確率を少しでも下げる工夫(改善)を実施する
もし、あなたの会社が[1]だとすれば、トップも含め、すぐにも姿勢を改めるべきだ。
以下に、失敗が発覚した後、よくあるまずい姿勢の例を列記する。
【まずい姿勢:失敗発覚の直後から原因追究まで】
・失敗が発覚すると、すぐに「誰がやったんだ!」と悪者捜しに奔走する
・失敗した当事者が責められて、会社を辞めざるをえなくなる。
・失敗を自部署の問題として受け止めず、周囲の状況のせいや他部署のせいにする
・ろくに調査をしないまま、勝手に原因を決めつけている
・失敗の当事者が、たった一人で原因追究と対策を考えている
・失敗の当事者・関係者ではない人が、ろくに情報収集しないまま原因追究と対策の報告書をまとめている
【まずい姿勢:失敗の対策について】
・失敗の報告書の対策欄には、「周知徹底」「教育」「チェックリスト」「マニュアル作成」「ダブルチェック」といった、いつも通りの言葉しか並んでいない
・原因追究して対策まで出したのに、その対策を誰も実施していない
● 人は不完全な部分にはまると失敗する
筆者は30年余りに渡って、様々な業種で原因追究や改善の指導に当たってきた。人がミスするには、それなりの原因がある。ここで言う「原因」とは、業務や作業に潜む不完全な部分を指す。「火の無いところに煙は立たない」。言い換えれば、不完全さの無いところにミスは無し。
私たち人間は不完全な生き物である。不完全な人間が作ったすべてのもの、社会、法律、会社、業務、作業、製品、設備には、何らかの不完全な部分が必ず存在する。失敗とは不完全な人間が不完全な部分にはまってしまうことを指す。
● 不完全さは増すばかり
会社を取り巻く環境がますます変化する中、利益を確保していくためには、今までの発想に捕らわれない商品やサービスを生み出していく必要がある。まして、今まで以上に人手不足、高齢化になっていく。現場では、突然担当者が会社に来られなくなると、不慣れな人が代わって仕事を回していかなければならない状況になることもしばしば。そういった厳しい状況でも会社を回していくためには、不慣れな人や高齢の担当者でもミスが起きにくい業務や職場を作っていくことが必然だ。このことは、現場だけでなく、管理職や経営層にも言える。
● 業務の不完全さを徹底的に抜本的に改善する
ミスの起きにくい業務や職場を作るためには、人の不完全さのレベルを議論するのではなく、どんな不完全なレベルの人でも失敗しないように、業務や手順の中の不完全な部分を見極めて日々改善していくことが求められる。「それは理想だ」と感じる人もいるだろう。だが、その理想を掲げて日々切磋琢磨している企業と、何もしない企業とでは、数年後には業務のレベル差は格段に開いてしまう。
日々切磋琢磨している会社では、顧客に迷惑をかけてしまった大失敗はもとより、日常発生するヒヤリハット事例(失敗はあったが、その後のファインプレーで顧客に迷惑がかかるのを防いだ事例)までも真剣に原因追究を行い、着実に改善を実施している。まさに、スポーツ選手が日々のトレーニングで、自分のフォームを徹底的に、抜本的に改善していく姿さながらだ。会社も職場も不断の改善が欠かせない。
● 失敗は考えを改めさせるための良薬だ
人は長い間同じような仕事をしていると、自分たちのやっていることは間違っていないと勝手に思いがち。まさに、井の中の蛙だ。そんな思い込みを粉砕するためには、失敗は良薬(良薬は口に苦し)だ。失敗しない限り、誰も今のやり方を変えようとしない。
ただ、気を付けてほしい。失敗の扱い方を間違えると、折角の良薬が良薬でなくなってしまう。失敗が発覚しても「またミスが発生したのか。今度は誰がやらかしたんだ?」と声を荒らげて当事者個人を責めているようでは、何も改善されないし、かえって職場全体が沈み込んでしまう。火の無いところに煙は立たない。言い換えれば、不完全さの無いところにミスは無し。失敗があったということは、失敗のあった業務の中に何らかの不完全さがあったことを意味する。だから、失敗をきっかけに事業や職場を進化させるという想いで、トップや管理職が現場と一緒になって失敗の原因となった業務の不完全な部分を探し、それを少しでも改善していくことが大事だ。
これから1年間、毎月1回のペースで、ミス等の失敗につながった不完全な部分をいかに探していくか(原因追究)と、その改善についての勘所を説明していく。