失敗は不完全さのシグナル【4】
複数人の関わる失敗は、
「いきさつフロー図」で把握漏れを防ぐ

作成日:2020-11-27
最終更新日:2021-11-05

 今回は失敗の原因を探る時に注意すべき情報収集の話だ。情報収集に抜けがあるまま、失敗の原因を探ると、原因を誤認逮捕しかねない。原因を取り逃がしているのだから、同じような失敗がまた起きてしまう。まずは以下をお読みいただきたい。
 ある晴れた日の昼下がり、営業担当の太郎さんが窓の外を眺めながら物思いにふけっているところへ、いきなり机の脇に置いたスマホが振動し始めた。電話の主は得意先の担当者。話の内容は、得意先が注文したのは「ACER」だったが、「ACEB」が納品されたということだった。すぐさま課長に報告し、再配達を手配。ひと段落着いている太郎さんのところに、いつものように課長からの指示が飛ぶ。
 「いつものように、花子さんと次郎さんと一緒に原因を探り、再発防止策を立ててくれ。3日以内に、だ」
 1時間後、今回の失敗の原因を探るべく太郎さんら3人は会議室に集まった。2人が席に着いたのを見計らって、太郎さんは今回の失敗に関わる全ての帳票のコピーを机の上に並べた。並べられた帳票は、注文書、出荷指示書、納品書。続けて、太郎さんは今回のいきさつを話し始める。太郎さんがいきさつを話している途中で、花子さんが話を遮る。
 「口頭では分かりにくいから、ちょっとボードに書きだしてくれない?」
 花子さんの発言を受けて、失敗に至ったいきさつをボードに書き出す。記載内容は、以下の通り。

1.箇条書きでいきさつを整理したもの

7月1日 注文書の受領
     出荷指示書の作成
7月2日 商品の梱包・出荷
7月3日 商品の納入
     連絡

ここで皆さんにクイズだ。

Q:今回の失敗(誤納品)の原因を探る上で、上記のいきさつの書きだし(表1.)に、足りない情報、および表1.と帳票原本以外に欲しい情報をいくつか挙げなさい。

答えは、以下の通り。
上記の表1.に足りないのは、
 

  • [1] おおよその時刻がない
  • [2] 主語がない
  • [3] 伝達手段がない
  • [4] それぞれの帳票に「R」、「B」のどちらが記載されていたか、わからない

など。
 
また、いきさつ(表1.)と帳票(原本のコピー)以外に欲しい情報は
 

  • [5] 誤った作業の手順やPC入力画面、倉庫レイアウト、作業動線といった情報がほしい
  • [6] 当該作業をした時の状況(いつもと変わったことはなかったか)がほしい

など。
 
 多くの企業で失敗の原因追究のやり方を見てきたが、いきさつを箇条書きで書きだす人が大勢いる。一人だけが関わった失敗であれば、失敗した人の実施した手順を箇条書きで書き出すのも良いだろう。だが、失敗を抑え込むには、一連の業務全体を把握した上で、業務に関わる人全てに必要な改善策が求められる。業務全体を把握するとなると、登場人物は複数人になることがほとんどだ。
登場人物が複数人の場合、たとえ主語を入れたとしても、箇条書きでは失敗に至ったいきさつが分かりづらいし、どうしても情報収集が粗くなる。情報が抜けたまま原因を探ると、刑事ドラマの脇役の刑事がよくやるような誤認逮捕につながりかねない。
 
では、一体どうすれば情報を抜けなく整理することができるのだろうか。それは、至って簡単な話だ。情報の抜けを防ぐには、箇条書きではなく、図を使うことだ。筆者はいつも、いきさつを漏れなく把握するためにフロー図を描く。名付けて「いきさつフロー図」だ。今回の失敗を「いきさつフロー図」で描いたものが、図1.。上記のクイズの答えの①②③④までは、図1.で表すことができる。失敗の事例によっては、システム連携図やレイアウト図など様々な図を活用する。失敗の原因を探るときに、情報収集の初めから箇条書きで整理していくのだけは止めたいものだ。

 図 1.いきさつフロー図でいきさつを整理したもの