失敗は不完全さのシグナル【7】
間違えた場合は、動作を分解してどんな間違いか見極める

業務改善コラム

作成日:2023-04-28

 今日もどこからともなく失敗に関わる会話が聞こえてくる。

 
 

「太郎さん、これでミスが2回目だ。
 手順書通りしっかりやってくれなきゃ困るよ」


「はいっ。次からしっかりやります!」

 
 読者の職場内でも似たような会話のやり取りがあるはずだ。
 
 上記の会話のように「次回からは手順書通りに実施するよう周知徹底します」とか、「ミスしたのは手順書が無いことが原因でした。早々に手順書を作成し、手順書通り実施するよう徹底します」といった再発防止策の記載された報告書が少なくない。しかも、管理職のハンコもしっかりと押してある。そんな報告書を見るたびに、「ミスしたなら、やり方を変えればよいのに、これじゃ人も育たないよな」と思いたくなる。

 

 今回は、人為ミスに対する的確な改善策を導くための1つのやり方を説明しよう。
 人為ミスの場合には、まず失敗した作業を動作に分解する。次に、図1.の「間違いの4段階」の「情報」「受取」「判断」「行動」をもとに、どの動作で、どんな間違いを引き起こしたのか見極めていく。

 
間違いの4段階フロー図
 

以下に、具体例で説明する。
例えば、伝票の入力でミスした場合、まずは伝票の入力作業を動作に分解する。

 

● 伝票の入力作業(一部)を動作に分解する

  1. 伝票の束から1枚の伝票を取る
  2. 伝票をパソコンのキーボードの左側へ置く
  3. 伝票内の伝票番号を見る
  4. 伝票内の企業コード番号を見る
  5. パソコン画面内の企業コード番号をクリックする
  6. 出てきた企業コード番号の中から、当該伝票の企業コード番号を見つける
  7. 当該伝票の企業コード番号をクリックする
 

● 伝票の入力作業(一部)を動作に分解する

  1. 伝票の束から1枚の伝票を取る
  2. 伝票をパソコンのキーボードの左側へ置く
  3. 伝票内の伝票番号を見る
  4. 伝票内の企業コード番号を見る
  5. パソコン画面内の企業コード番号をクリックする
  6. 出てきた企業コード番号の中から、当該伝票の企業コード番号を見つける
  7. 当該伝票の企業コード番号をクリックする
 

次に、上記の動作一つひとつについて、想定される「間違い」を考える。

 

●上記の動作と想定される間違い

1.伝票の束から1枚の伝票を取る
 【考えられる間違い】
 → 伝票の束の中に、異なる伝票が紛れ込んでいる
 → 伝票を1枚だけ取り出そうとしたにもかかわらず、一枚の裏側に二枚目が引っ付いたまま取り出してしまう

 

2.伝票をパソコンのキーボードの左側へ置く
 *伝票を机の下に落としたり、机の上の他の書類に紛れてしまうことはあっても、この動作で想定される間違いはない

 

3.伝票内の伝票番号を見る
 【考えられる間違い】
 → 伝票番号を見間違える

 

4. 伝票内の企業コード番号を見る
 【考えられる間違い】
 → 見る欄を見間違える
 → 伝票内の企業コード番号を見間違える
 → 企業コード番号の一部だけ見て、別の企業のコード番号と勘違いする

 

5.パソコン画面内の企業コード番号をクリックする
 【考えられる間違い】
 → クリックする位置を押し間違える
 
6.出てきた企業コード番号の中から、当該伝票の企業コード番号を見つける
 【考えられる間違い】
 → 企業コード番号を見間違える

 

7.当該伝票の企業コード番号をクリックする
 【考えられる間違い】
 → クリックする位置を押し間違える

 

 ミスした伝票やパソコンの画面等と照らし合わせながら、当該ミスに当てはまる間違いを見極める。当てはまる間違いを見極められたら、その間違いを無くすための改善策を考える。

 

 「見間違い」であれば、文字の大きさや色、表示内容、形等を変えるといった見間違いを無くす改善策を考える。また、「勘違い」であれば、、勘違いしないような工夫を考える。

 

 今後ますます人手不足や職場の高齢化が進むことを考えれば、いっそのこと人が関わらないようなやり方にするといった改善策も考えていくべきだろう。

 

 刑事ドラマの主役の刑事のように、動作を細かく探っていけば、自ずと答えは出る。
 くれぐれも脇役の刑事のような大雑把な探り方はしてはならない。
 「手順通り徹底します」といった浅はかな対策を出さないためにも。