失敗は不完全さのシグナル【8】
管理職は自分の役割と責任を自覚せよ

業務改善コラム

作成日:2023-04-28

今日もどこからともなく失敗の会話が聞こえてくる。

 
 

ある日、課長は顧客から「重要な資料」作成の依頼をメールで受け取った。
依頼内容を確認した課長は、配下のリーダーに資料作成の依頼メールを出す。依頼を受けたリーダーは、さらに部下の五郎さんへ転送する。
リーダーから五郎さんへの転送メールには、課長の指示メールが添付されていた。

 

2日後の午前、五郎さんはリーダーへ頼まれた資料を送付した。
メールを見たリーダーは、五郎さんが作成した資料を確認して、課長に資料
を転送する。
同日の夕方、資料を確認した課長は、顧客へ資料を送った。

 

翌朝、顧客から資料に重大なミスがあると連絡が入った。
今回のミスは、顧客の特別な事情を踏まえて作成しなければならない資料だったにもかかわらず、標準的な資料を作成してしまったというものだった。
特別な事情については課長とリーダーはよく知っていたが、五郎さんは知らなかった。

 

課長からの指示でリーダーと五郎さんはすぐさま資料を修正する。
修正した資料をリーダーから受け取った課長は、改めて念入りにチェックした上で顧客に送り、ひとまず事なきを得た。

 

対処後、リーダーと五郎さんは課長から、今回の失敗について原因追究するようにと命じられた。

 
 
体制と情報の流れ

今回の体制と情報の流れ

 

 さて、この失敗の場合、どこに原因があるのか読者に考えてもらいたい。

 

 最初に仕事を依頼されたのは課長。そして、課長自身は顧客の特別な事情については知っていた。本ケースの場合、課長がリーダーに指示を出す段階で、リーダーがミスをしないために、特別な事情を踏まえて資料を作成するよう指示を出す必要があった。

 

 また、たとえ課長からの指示内容に特別な事情についての記述が無かったとしても、リーダーは五郎さんへ指示を出す段階で、特別な事情について五郎さんへ伝えるべきだった。

 

 さらに、課長、リーダーそれぞれはチェックの際に、特別な事情を踏まえてチェックすべきだった。

 
 

 本ケースでは、管理職は部下に仕事を丸投げしており、チェック機能も果たしているとは言えない。よって、部下に原因追究を押しつけるのはもってのほかであり、管理職自身の問題として、しっかり受け止めなければならないケースである。

 

 実は、このようなケースは少なくない。管理監督者は担当者が間違いなく確実に仕事を遂行できるよう指示を出すことは、自分の役割であり、責任の範疇であることを忘れてはならない。

 

ほかにも、以下のような管理職に関わる問題が様々な企業で散見される。
 

 
 
  • 管理職が部下に指示した後、指示した内容が誤りなく遅滞なく遂行されているか、管理職が見届けていない
 
  • 部下が遂行すべき仕事を、自分でやったほうが楽だからと自らが実行してしまい、チェックも自身のチェックだけで済ましてしまい、自分の誤りに気づかない
 
  • 担当者が作成した書類に誤りがあっても、上位職の誰が何に責任を持つのかはっきりしていないため、最初の誤りが延々と見過ごされ続ける。
    ハンコが数多く押印されている書類ほど要注意
 

 常に、管理職自身の役割と責任を自覚することが必要だ。ただし、役割と責任は仕事の内容によって変わるため、都度自分で確認することが求められる。

 

 部下の失敗の中には、管理職自身に関わる問題があるケースもあることを常に頭に入れておかなければならない