更新日:2020.09.02
マーケティングの基礎

「マーケティング」を知るには定義から理解する必要がありますが、実はマーケティングの定義は諸説あり、一義的に定まってはいません。ビジネスには様々なケースが存在するため、状況によって定義は変わってくるからです。
日本マーケティング協会の定義では「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」とされています。
もう少しかみ砕いて言うと、マーケティングとは、売り上げを上げるためのビジネスプロセス全て、と言えるでしょう。
また、マーケティングには自社の利益と共に顧客の利益も追求する必要があるという意味も含まれています。自社の利益だけを考えたビジネスモデルは持続性がなく、やがて市場から追い出されてしまうからです。
マーケティング戦略はビジネスの方向性を左右します。企業の方針と合致したものでなければ行動に矛盾が生じてしまうため、企業理念と同義で考える必要があります。
基本となるマーケティング戦略

マーケティング戦略とは、企業の目的を達成するために限られたリソースを効率的に活用するための計画のことです。
マーケティングは基本的に「目的」→「戦略」→「戦術」の 3段階で行います。
- 目的(商品/サービスの販売・ブランド認知の拡大など)
- 戦略(先を見通した中長期的な計画)
- 戦術(販売方法・広告など)
マーケティング戦略は、3段階中の2つ目の段階です。
企業には必ず「目的」(商品/サービスの販売・ブランド認知の拡大など)が存在します。効率的な目標達成にはリソース(ヒト・モノ・カネ)を無駄なく活用することが重要で、そのための先を見通した計画が「戦略」です。
一方「戦術」とは戦略を実行するための方法のことですが、しっかりとした戦略を立てずに場当たり的に戦術を行っても、狙った成果を上げることはできません。だからこそ「マーケティング戦略」が必要なのです。
マーケティング戦略の立て方

マーケティング戦略を実行するためには、まず戦略の立て方について理解する必要があります。以下、戦略立案の具体的な方法について順番に解説していきます。
<マーケティング戦略の立て方>
- 内部・外部環境を分析する
- セグメンテーション(市場細分化)を行う
- ターゲティング(標的市場)を行う
- どのような価値を提供するかを定める
- どのように提供するのかを定める
- 実行に移しPDCAを回し改善していく
内部・外部環境を分析する
マーケティング戦略の立案は企業内外の環境を調査・分析するところから始まります。自社のリソースや環境、競合の状況によってできることや取るべき施策は変化するからです。どんなに優れた戦略だとしても、実行できなければ意味がありません。
また、正確な調査・分析を行うためには、関係各所に足を運び、従業員や顧客にヒアリングすることが重要です。現場の生の声を聞くことで、把握できていなかった事実や新たな問題の発見に繋がります。
環境の調査・分析にはマーケティングのフレームワークを使用します。フレームワークの具体的な内容については後ほど解説します。
セグメンテーション(市場細分化)を行う
セグメンテーションとは、市場の中に複数存在するニーズを切り分けて細分化することを言います。
商品/サービスの開発において、市場に存在する全てのニーズを満たす商品を作ることは不可能です。万人受けを狙うと平均的で特徴のない商品になってしまい、競合他社の独自の強みを持つ商品に負けてしまいます。
競合優位性の高い商品を作り出すためには、自社の強みと市場のニーズが重なる場所を探す必要があります。そのためにはセグメンテーションによりニーズを切り分けて、市場の構造を把握することが有効です。
細分化の切り口は様々ですが、業種、業態、地域、年齢、性別、趣味、趣向、過去の行動データなどといったパーソナル情報からニーズを調査し、近いものをグループ分けしていきます。採算に見合うだけの市場規模があるかどうかも重要な検討材料です。セグメンテーションは、自社の商品と顧客属性が適合しているかの判断材料にもなります。
ターゲティング(標的市場)を行う
ターゲティングとは、セグメンテーションで市場の細分化を行ったうえで、どの顧客層に優先順位を定めるのかを決めることです。
具体的な顧客層を選定することによって、ニーズの深堀や商品コンセプトの立案、自社の強みや弱みが浮き彫りになり、どういったマーケティング戦略が必要なのかが明確化されます。
ターゲティングを行う際に有効な方法がペルソナ設定とカスタマージャーニーです。ペルソナ設定とは架空の顧客像を想定することで、カスタマージャーニーはペルソナの行動を可視化して商品やサービスとの接点を探る施策のことです。
いずれにしても、顧客ニーズの正確な把握がターゲティングの精度を左右します。
どのような価値を提供するかを定める
ターゲットが決まったら、自社の商品/サービスがユーザーにどのような価値を提供できるのかを定めていきます。
ユーザーは商品の持つ価値に魅力を感じて購入するので、価格、競合との差別化、付加価値など、価値のどこにポイントを置くのかが重要になってきます。
そこで役に立つのが内部・外部環境を分析することで得られたデータやターゲティングによって明らかになったユーザーニーズです。
分析した結果を基に、競合他社にはない点、もしくは自社の強みとユーザーニーズが合致するポイントを探ります。
H3:どのように提供するのかを定める
提供できる価値を定めたら、どのような形で提供することがユーザーにとって最適なのかを考えていきます。提供方法を決める際には、ユーザーの生活スタイルや時代の変化など、ありとあらゆる要素を加味して考える必要があります。ユーザーを取り巻く環境によって最適な提供方法が変わるからです。
そのためには、値段や時間、入手するまでの手間、心理的な負担など、ユーザーの視点に立って考えることが大切です。
実行に移しPDCAを回し改善していく
マーケティング戦略は実行したら終わりではなく、改善まで行ってはじめてより効果的なものとなります。
市場を分析し、最適と思える施策を行ったとしても全て想定した通りに物事が運ぶとは限らず、計画と現実にズレが生じてしまうことも少なくありません。自社やユーザーを取り巻く状況は絶えず変化していますし、そもそもの前提条件が間違っている場合すらあり得るからです。
状況の変化や間違いを修正するには改善のためのPDCAサイクルを回し続けることが重要です。PDCAサイクルとはPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の一連の流れのことで、このサイクルを回して改善を繰り返していくことによってマーケティング戦略はより強固なものになります。
マーケティングの身近な例

ここでは、BtoB市場でのマーケティング成功例を3社紹介します。3社とも異なるマーケティング手法をうまく取り入れているので、ぜひ参考にしてください。
<マーケティングを活用するBtoB企業3社>
ライオン株式会社
株式会社モリサワ
サイボウズ株式会社
<事例3社に共通する成功要因>
マーケティングに成功している事例に共通して言えることは、Push型(売り込み)ではなくPull型(引き出す)の施策を行っている点です。
顧客主体のマーケティングを実施することによってユーザーが自ら進んで関わる形を作り出し、結果として売り上げ増加などの成果に繋げています。
自社の特性をよく理解したうえで新しいマーケティング手法を取り入れているという部分も共通しています。
ライオン株式会社
大手日用品メーカーのライオン株式会社は、法人向けWebサイトを新設してコンテンツの追加やサイト設計などの改善を行った結果、問い合わせ数や売り上げの増加に繋げることに成功しました。
これはWebマーケティングというもので、Webサイトを起点としてインターネット上で様々な施策を行うマーケティング手法です。WebマーケティングではWebサイトへのアクセス数や流入経路といったデータを基に、サイト設計の改善やコンテンツの追加などの実行によって流入増加や商品成約率の向上を狙います。
<サイト設計見直しで売り上げアップ>
ライオン株式会社では、企業サイト内に法人向けのノベルティお問い合わせページを設置するも、アクセスが少なく目的外の問い合わせが50%を占めていました。
そこで、新たにお問合せサイトを立ち上げ、企業サイト内の商品情報ページから誘導できるように導線設計の見直しや、お問い合わせ内容に合わせたコンテンツの追加などの施策を行ったのです。
その結果、目的外の問い合わせが5分の1になり、問い合わせ数も増加し、サイト新設から3年で単月平均売上3.5倍を達成しました。
株式会社モリサワ
フォントの企画開発を行う株式会社モリサワは、Twitterアカウントを運用することで、自社製品の利用増加という目標を達成しました。
これはSNSマーケティングといって、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワーキング内でアカウントを運用することでブランド認知やファン獲得を目指すマーケティング施策です。
ブランディングやコミュニケーションを目的としたSNSマーケティングは、一見するとBtoB企業には関係がないように思えますが、SNSを使った情報発信によって企業活動に良い影響を与えている事例はたくさんあります。
<認知度アップでサービス利用数増加>
モリサワでは新しいフォントをリリースしてもなかなか利用してもらえないといった問題を抱えていました。
そこで、ユーザーに新しいフォントの認知を促し、ダウンロードして利用してもらうために、フォントの特徴を端的に説明したアニメーションの配信や、Twitter広告の運用などの活動を行ったのです。結果として例年の倍のペースでインストール数を伸ばすなどの成果に繋がりました。
サイボウズ株式会社
ソフトウェア開発を行うサイボウズは、ビジネスハックや働き方の情報を扱う自社メディア「サイボウズ式」の運営によって、自社の認知向上や売り上げの拡大に成功しました。
これはコンテンツマーケティングといって、自社で独自性の高いメディア(ブログなど)を運営することでブランド認知や信頼性の向上、情報の拡散などを狙う手法です。
<ユーザー満足度の高いコンテンツでサービス利用者増>
サイボウズ式の特徴的な運営方針が「KPI(重要業績評価指標)やKGI(経営目標達成指標)などの数値目標を設定しない」というものです。
通常、Webマーケティングを行う際はKPIやKGIといった目標達成指標を定めるものですが、サイボウズ式ではあえて数字を追わずに、ユーザーにとって本当に役に立つ情報を伝えることに主眼を置いた運営を徹底しました。
その結果、商品PRや宣伝をしないにもかかわらず、自社サービスの認知向上や売り上げ拡大といった成果に繋がったのです。
マーケティング戦略を立てるのに役立つフレームワーク

フレームワークとは、事象をもれなく素早く把握し、実行するための確立された枠組みのことです。フレームワークに当てはめることで、やるべきことや手順が明確になり、効率的な戦略立案に繋がります。
マーケティングフレームワークにはたくさんの型があります。それらの型は、状況によって使い分けることで効果を発揮します。
こちらの記事ではマーケティング戦略を立てる際に役立つフレームワークを紹介しています。企業の大きさや事業規模にかかわらず活用できるので、ぜひ自社のプロジェクトに置き換えて分析に活用してください。
代表的なマーケティングの手法3選

マーケティング戦略が決まったら、具体的なマーケティング施策を行います。マーケティングを実行するための施策にも様々な種類が存在します。その中でも近年、多くの企業で導入されている代表的なマーケティング手法3選を紹介するので、自社の戦略に合ったものを選ぶ参考にしてください。
<代表的なマーケティングの3手法>
Webマーケティング
SNSマーケティング
コンテンツマーケティング
Webマーケティング
Webマーケティングとは、インターネット上で行われるマーケティング活動のことです。WebサイトやWebサービスを起点として行われ、売り込みをせずとも物が売れていく仕組みを作ることを目指します。
スマートフォンの普及によって多くの人がインターネットを利用するようになりました。企業はWebマーケティングを使ってインターネット上に自社の商品情報を用意しておくことで、効果的にユーザーとの接点を増やすことができます。
Webマーケティングは少ない人員で多くのユーザーにリーチ可能なので、うまく行えばコスト削減に繋がります。また、全てインターネット上で行うためユーザーの流入経路やアクセス数といったデータの取得が比較的容易で、すぐに修正できることも魅力です。
ただし、メリットが多い一方で、担当者の実力に依存する部分が大きく、成果を上げるためにはノウハウが求められます。Webマーケティングのトレンドは変化が早いため、常に情報をキャッチアップしていくことが必要です。
<Webマーケティングのメリット>
多くのユーザーにリーチできる
施策をすぐに実行できる
データ取得が比較的簡単
修正がしやすい
低コストで実行できる
<Webマーケティングのデメリット>
運用にノウハウが必要で、トレンドが変化する
担当者の実力に依存する部分が大きい
地域密着型のサービスは成果が出づらい
SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、ソーシャルネットワーキングを用いたマーケティング手法のことです。Twitter、Facebook、InstagramといったSNS上でアカウントを運用し、自社や製品の宣伝活動やユーザーとのコミュニケーションに利用します。
SNSには、コミュニケーションツールなのでユーザーとの距離感が近く信頼を構築しやすい、ユーザーの生の声が聴ける、ファン化に持っていきやすい、といった特徴があります。また、大手SNSサービスはターゲティングに優れているため、狙った属性にアプローチできるのも大きなメリットです。
ユーザーにとって有益な情報やトレンド性の高い情報を発信することで、フォロワーの獲得や情報が爆発的に拡散される、いわゆるバズった状態を生み出しやすいといった特徴もあります。
その一方、投稿内容が資産になりづらく常に情報発信をし続ける必要があることや、情報の拡散性が高い分炎上のリスクがあるなど、扱い方には注意が必要です。
<SNSマーケティングのメリット>
企業ブランティングの構築に効果的
ユーザーとの信頼を築きやすい
口コミ効果で情報の拡散が狙える
精度の高いターゲティングが可能
ユーザーとの接点が近く、生の声が聴ける
<SNSマーケティングのデメリット>
炎上のリスクがある
効果が出るまでに時間がかかる
継続的な運用が難しい
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、Webマーケティングの一種でユーザーにとって有益性の高いコンテンツをWeb上に用意することで集客に繋げる施策のことです。オウンドメディアの記事やYouTube動画などのコンテンツが該当します。
コンテンツマーケティングのメリットは、ユーザー自身が進んでサイトにアクセスしてくれることです。ユーザー自らサイトに来るため広告費が不要です。また、内容に興味関心が高いユーザーが集まるため購買に繋がりやすいという特徴があります。さらに、コンテンツの内容を工夫すれば、顕在層だけでなく潜在層の取り込みも可能です。
一方で、SNSに比べ拡散力が弱く、コンテンツが成長するまでに時間がかかるデメリットもあるため、拡散力を補う工夫が求められます。
<コンテンツマーケティングのメリット>
作ったコンテンツが資産として機能する
初期投資が少なく取り組みやすい
広告費がかからずコスト削減になる
潜在層と顕在層両方にアプローチできる
<コンテンツマーケティングのデメリット>
効果がでるまでに時間がかかる
有益なコンテンツを発信し続けるのが大変
運営にノウハウが必要
まとめ

この記事では、マーケティングの基本のやり方をテーマに、戦略の立案方法や、成功事例などを解説しました。マーケティングにはいくつもの段階や、たくさんの手法が存在します。その中から最適なものを選び出し実行することはそう簡単なことではありません。戦略を立て、実行と改善の PDCAサイクルを回して成果に結びつけてください。