更新日:2020.10.29
リードスコアリングとは、リード(見込み顧客)が持っている自社への価値を予測し、その価値に応じてスコアリング(点数化)するマーケティングオートメーションの機能のひとつです。マーケティングオートメーションでは、訪問者のアクセスやメールの反応、セミナー・イベントなどの出席、テレアポ電話の反応などからリードの行動を記録します。マーケティングオートメーションが記録した行動を、リードスコアリングの設定に基づいてスコア(数値)に変換するのがスコアリング機能です。
リードスコアリングとは
リードスコアリングでは、リード(見込み顧客)の規模、業種、エリアなどのターゲット要件や予算、決済権、ニーズ、導入時期などの営業要件を満たしているかなどを基準に点数化します。スコアが高ければ高いほど、そのリードは商品やサービスを購買する可能性が高いことを示しているわけです。また、購買と直接関係しない場合であっても、ウェブサイトへのアクセス頻度やメールマガジンの開封率、特定ページへのアクセスの有無、SNSにおける影響力などを評価の軸に加えて算出する場合もあります。
これらの条件を組み合わせてリードのスコアリングをすることで、施策上の優先順位を決めることができ、どのリードに対してどのような施策を行うかなどの選定ができるようになります。ただし、必ずしも「スコアリングが高い=購入意識が高い」とは限りません。
例えば、スコアリングの結果から、見込み度が高いリードが現れたとしましょう。しかし、そのリードがアクションを起こしたいう情報が数カ月前のものであれば、仮に点数が高かったとしても、本当に見込み度が高いとは言いきれません。また、リードは必ずしも見込み顧客とは限りません。競合やパートナーを組みたいという企業である可能性もあります。リードスコアリングはあくまでも数字上のデータです。本当に見込み度の高いリードなのかどうかは、営業とマーケティングの経験と知見を信じて連携することも重要なのです。
リードスコアリングに必要な3つの情報
リードスコアリングでは、リード(見込み顧客)について把握できた情報を、できるだけ自動的に点数に置き換えます。スコアリングのもとになる情報は、大きく「基礎情報」「意識情報」「行動情報」の3つに分類することができます。
基礎情報
規模や業種、部署や役職など、直接コンタクトしなくても判別できるリードの客観的情報です。ターゲットに当てはまるリードには加点し、当てはまらないリードのスコアを減点することによって、顧客となる可能性が低いリードを営業案件から外すことができます。例えば、特定の所属部署を対象としている場合には、その部署に当てはまらないリードに対しては減点するといったことを行うのです。また、任意の入力フォームにも記入したリードに対しては加点するという判断もできます。
H3:意識情報
嗜好や現状の商品・サービスへの不満、要望や課題など、リードとのコミュニケーションからわかる情報です。問い合わせを受けた内容を評価するなどして、実際にリードとやり取りした内容を基に点数をつけるのが主な方法です。
例えば、メールマガジンの購読の有無だけでは関心があるかどうかまで判断できませんが、開封したタイトルやクリックスルー率を見れば、リードの関心レベルがある程度はわかります。SNSにおけるアクション数やエンゲージメントを見ることによっても関心度を測ることができます。
行動情報
セミナーへの参加、サイトの閲覧、資料のダウンロードなど、リードの行動からわかる情報です。リードの行動を追跡することで、購買意欲をどの程度持っているのかを知ることができます。その際には、最終的に顧客となったリードがどのようなコンテンツをダウンロードしていたか、顧客になる前にどのページをどのくらいの時間閲覧していたかなど、数量や時間、種類などを基準に加点減点を考慮するのです。価格欄や商品デモのリクエストなど価値の高いページを閲覧したり、任意のフォームに記入したりしたリードには高いポイントをつけることが考えられます。
基礎情報、意識情報、行動情報から計測・分析すべきデータは多数ありますが、リードスコアリングにおいては、データだけに依存することなく、営業チームやリードの意見をヒアリングしたり、データを詳細に分析したりするなどの連携や補足が必須です。そうすることでリードを顧客へとコンバートするために、最も価値の高いコンテンツは何なのか、どのポイントでどんなコンテンツやメールを配信すべきかなどが見えてきます。
リードスコアリングのメリット
リードスコアリングにはさまざまなメリットがありますが、主にコストと人的リソースの省力化によって営業効率を上げるのが大きな目的です。
人的コストを解消
個々のリードの行動を人的にスコアリングするのは非常に煩雑な作業ですが、メールの開封やページ閲覧の確認などを自動で実行すれば、各リードの反応を自動的にスコアリングできます。全てを自動化することはできないまでも、営業やマーケティング、セールスなど、これまで人が時間をかけて行っていた作業を省くことができれば、経費を大幅に抑えられます。
受注率と営業効率を上げ、機会損失を減らす
従来のマーケティングやセールスは経験や勘に頼る側面が強くありました。しかし、今や企業やユーザーのニーズは多様化・細分化・専門化しており、経験や勘だけでは対応しきれなくなっています。スコアリングは営業にかかる負担や手間を軽減し、購買意欲の高い少数の顧客に効率的にアプローチすることができます。
リストを最大限活用する
ニーズの低いリードを可視化できることもメリットのひとつです。最初は低スコアのリードであっても除外せず継続的にアプローチしていれば、スコアが変わったタイミングを的確につかむことができます。ステップメールで段階的にアプローチする、アクセス解析から得られたリードの興味や関心に対する定期的なアプローチをする、などの施策によりリードの情報を最大限に活用することが可能です。
営業とマーケティングの連携強化
営業とマーケティングは目標が同じはずでも、場合によっては手順を巡って対立することがあります。営業はマーケティングに対して「質の低いリードばかり集めている」と不満を漏らし、マーケティングは営業に対して「ホットリードでないと満足しない」と考えがちです。
しかし、営業とマーケティングにはそれぞれの役割があります。スコアリングは数字を使うことにより客観性が高いので、リードに対しての動きが重複することなく、部門間の連携強化と効率的な活動につなげることができるのです。
リードスコアリングの設計の仕方
リードの属性や行動から得られる興味や関心、行動頻度から得られる活性度など、それぞれに対して点数をつけることで対応の優先順位を決めていきます。スコアリングを始める際には、まずはスコアをつけずに有望なリードを発見するように心がけると良いでしょう。
デフォルトの設定
マーケティングオートメーションを初めて導入する場合は、デフォルト(初期状態)である程度のスコアリング設定を行います。
例えば、以下のような項目について予めスコアが設定されています。
・メールの開封
・イベントへの登録
・ファイルへのアクセス
・フォームの登録
・商談の作成
・不成立の商談
・成立した商談
・ページビュー
デフォルトのスコアリングに対し、アクションに応じて加点減点をしていきます。スコアリングを積み重ねていく中で、自分の理想のスコアリング設定が見えてきます。慣れるまでは初期設定のままでも差し支えありませんが、リードの動向は常に変化するものと考え、一度設定したら終わりにしないで、状況に応じてスコアリングの条件を変更することをおすすめします。また、これまでスコアリングの運用経験があり、行うべきスコア設定が決まっている方は、最初からオリジナルでスコア設定をしておいてもよいでしょう。
購買サイクルの調整
スコアリング機能には、スコアを計算する期間の設定があるので、スコアの高いリードへの対応が決まったら、計算期間を決めていきます。スコア計算期間は通常1日に設定しますが、毎日ログインできない場合は余裕をもって2〜3日に設定しても良いでしょう。例えばメールマガジンを2週間に一度だけ送るなら計算期間を2週間に設定することもできます。
スコアリングの最適化
施策の内容やBtoB、BtoCといった業態に応じてカスタマイズが可能です。結果が出てきたら、スコアと関連するプロセスの見直しを行い、市場動向の変化や新商品の販売などに応じて最適化を行います。最適な設定方法は各社の目標によってケースバイケースなので、注意する点やポイントを把握して、効率的なスコアリング設計を練ることが大切です。
リード属性を抽出
リードスコアリングでは、スコアが高いリードだけをフィルタリングして抽出してくれるので、高いスコアのリードを把握することが可能です。リード属性を抽出する条件には大きく分けてユーザー属性と行動履歴がありますが、育成すべきリードや、購買意欲の高いリードを抽出し、そのリストに対して最適なアプローチを実施します。
ROI(投資対効果)の測定
見込み度合いの高いリードだけを抽出して営業が対応すれば、より効率的な営業活動が可能です。最も費用対効果の高い施策を洗い出し、強化していくことで購買サイクルの期間短縮、営業生産性の向上などのROI(投資対効果)の向上につなげていきます。
PDCAを回す
PDCAはPLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(評価)→ACTION(改善)という4段階のサイクルを回し、継続的に改善を図っていく取り組みです。リードスコアリングではこのPDCAサイクルがとても重要であり、繰り返すことによってより精度を高めていく必要があります。特に各項目に割り振った評価点などは随時見直さなければなりません。
例えば「部長5点、課長3点」と最初に決めたスコアが想定と異なり、実際に決裁権を持つのは課長である場合も考えられます。実は部長でも課長でもなく、決裁権は社長にあるといった場合も出てくるかもしれません。そのため、営業とマーケティングで常に協議を重ねながら、点数の評価を見直していく必要があります。PDCAサイクルを回しながらデータを蓄積し、ある程度の期間で評価を再確認するなどの工夫を行っていくことが大切です。
スコアリングによる評価と創出
リードスコアリングを実施するにあたり、まず何を数値化して評価していくべきなのかを把握する必要があります。スコアリング対象の項目として、以下の 3つが挙げられます。
- アトリビュート(属性)
- インタレスト(興味)
- アクティビティ(活性度)
①アトリビュート(属性)
アトリビュート(属性)は、担当者の役職・規模・地域・部門などです。コンタクトしているリードが決裁権や社内的な影響力を持っているかどうかも、契約の成否を左右する要素となります。スコアリングを行うにあたっては、このようなリードの属性について考慮することが求められるのです。
例えば、担当者が課長クラスなら3点、部長クラスなら5点と役職に応じて点数をつけたり、従業員数が100人未満なら3点、100人以上なら5点としたりするなど、規模に応じてスコアリングしていきます。属性スコアリングの設定では、自社製品が売れる可能性がある業種や、購入の意思決定権を持つ役職に対する加点を大きくするのが一般的です。
②インタレスト(興味)
サービス紹介ページの閲覧回数、コンバージョン回数、資料請求の有無、無料トライアルの利用などから各リードが自社サービスに関心を持っている度合いをスコアリングします。リードが自社の商品・サービスにどれくらい興味を持っているかを把握することによって、それぞれのリードをどうフォローしていくかという判断が可能です。
例えば、ウェブサイトの商品・サービスのページを閲覧していれば5点、資料をダウンロードすれば10点など、コンバージョンに近い行動を取るリードほど高得点がつきます。点数が高いリードから順にアプローチしていくと、受注率は高まるでしょう。
③アクティビティ(活性度)
アクティビティ(活性度)では、インタレスト(興味)の項目でスコアリングをした行動履歴からどの程度時間が経っているか、によって数値を見直していきます。リードの行動が最近なのか、数カ月前なのかといった時期の違いによって顧客の興味・関心の高まり度合いは異なると想定できるので、アクティビティの項目におけるスコアリングは減点方式が基本です。
資料請求をしたのが3日前なら10点、1週間前なら5点に減点する、といった具合にスコアリングしていきます。数カ月前に頻繁に行動していたリードの場合、すでに他社の商品・サービスを購入している可能性が高いため、直近でアクティビティが高いリードに対しては速やかにアプローチすべきだという判断につながるのです。
アトリビュート(属性)・インタレスト(興味)・アクティビティ(活性度)の3つの項目を基に、状況に応じて適切なスコアをつけ、スコアに応じて適切なアクションを起こすことが重要です。
まとめ
リードスコアリングの最大のメリットは、リードに優先順位をつけられることです。それはすなわちマーケティングと営業の効率化を意味します。営業は確度の高いリードに集中できるので、営業活動を効率化することができます。一方、マーケティングは確度の低いリードに対して商品の情報を定期的に提供し、理解度や興味を育てることで他社の商品を検討・購入するのを避けたり、営業が何かの事情でアプローチができていないリードと密に連絡をとったりするなど、他の施策を打ち出せるので、確度の高いホットリードを営業に渡せるようになるのです。
しかし、今や購買検討プロセスにおいてはウェブ上のさまざまな情報が検索・比較される時代です。購入の意思決定に際して最も重要な情報が自社サイトにあるとは限りません。リードスコアリングの設計には営業的視点ももちろん必要ですが、まずはリードの購買意欲の程度や、検討プロセスに対する理解を深めることが大きな鍵となります。
そのためには、リードに何を伝えるかを明確に定め、コンテンツを計画的に制作することが重要です。そして、リードスコアリングの状況に応じたきめ細やかな接客と育成、そして商談・契約につなげるためのポイントを抑えた取り組みをする必要があります。マーケティングオートメーション機能で顧客情報の管理から見込み顧客への育成、抽出まで行うことができます。