企業にとっての、他社にはない「強み」をあなたは把握していますか?特に新しい取引先などに自社の「強み」をわかりやすく説明できると訴求力の高いアプローチになるでしょう。
自社の「強み」が分からないまま営業に行ったところで、お客様に「この企業に仕事を頼みたい」「この企業の製品を使いたい」と感じてもらえるようなアピールができるはずもありません。
経営学の神様と呼ばれるP.F.ドラッカーは「強み」について、次のような言葉を残しています。
人が成果を上げるのは強みによってのみである。
人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。
弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。
強みに集中し、卓越した成果をあげよ。
出典:「マネジメント」ダイヤモンド社 2008年12月
人(企業)が成果(利益)を上げることができるのは、「強み」によってのみであるということ。
ただ、その「強み」を知ることについては、次のような言葉も述べています。
知っている仕事はやさしい。そのため、自らの知識や能力には
特別の意味はなく、誰もが持っているに違いないと錯覚する。
逆に、自らに難しいもの、不得手なものが大きく見える。
出典:「創造する経営者」ダイヤモンド社 2007年5月
「強み」と表現するだけでは漠然としたイメージしか湧いてきませんが、この二つの言葉を並べると企業における「強み」が何なのかが理解できるようになってくるのではないでしょうか。
企業は「強み」のおかげで利益を上げているにもかかわらず、当たり前にできることが「強み」となるために、ほとんどの企業はそれが「強み」だと自らは気づかない、ということになります。
どのような形であれ、企業の目的とするところは「利益を出す」なのですから「どこでもいいから適当に発注する」という風には考えません。
お客様が自社に仕事を依頼する、あるいは自社の製品を買ってくれるとき、そこには必ず理由となる「強み」が存在しているはずです。例え小さな理由だとしても相手が評価してくれているからこそ、その商品や企業を選ぶのです。
強みは「商品力」や「価格」だけにとどまるものではありません。次のような事柄はどれも「強み」に当てはまります。
- 安価である
- デザインや品質が優れている
- 品揃えがいい
- 〇〇賞受賞、など誰から見てもわかりやすい評価を受けている
- 信頼できるスタッフや長年の付き合いがあるので気兼ねなく依頼できる
- 独自の販路を持っている
- 取引によって別の利点が生まれる
- すべてお任せでやってくれる
- ほかの企業では行っていないサービスがある
- 権利を持っている
- 小回りが利いたり、対応が速い
- ブランド力が高くファンが多い
これら以外にも「強み」と表現できるものは数多く存在しますが、多くの企業の場合「売れた」という結果に満足するのみで、その商品が「どうして売れたのか」を明確に理解していない場合も多いようです。
しかし、「強み」をしっかりと認識するだけで、「結果オーライ」で得られていた成果をもっと伸ばして行くことが可能です。例えば自社の「強み」をはっきりと認識することで、
- 自社の「強み」に特化した効率の良いアピール・セールスを行うことができる
- PRや製品開発に一貫性が出る
- 「強み」を気に入ったお客様が購入してくれることにより、自社の得意分野で勝負する機会が増える
- 「強み」を明確に理解することで、社員が「強み」を高度化しさらに価値を押し上げるようになる
- 他社の「強み」を目にしても、自社のやり方がぶれなくなりPRや製品開発に一貫性が出る
といった様々な成果が生じることも期待できるでしょう。
ではどのようにすれば不利な傾向を克服し、正確な「強み」を発見することができるのでしょうか。ポイントは先ほど紹介した
知っている仕事はやさしい。そのため、自らの知識や能力には特別の意味はなく、誰もが持っているに違いないと錯覚する。
この言葉にあります。
「強み」はどのように見つけるのか
顧客(第三者)の視点を持つ
自社が仕事を獲得したり、製品を買ってもらえているのはなぜなのか。
これを知る最も有効な手段は、実際に仕事を依頼し、製品を買ってくれるお客様の視点を持つことです。そのためにはお客様の意見を聞くことが最も大切です。しかし、「うちの会社の強みは何ですか」と聞いても、明確な答えが返ってこないことの方が多いでしょう。
なぜならお客様は、企業が持つ強みではなく、商品やサービスに魅力を感じて、つまりその特長に対価を払ってもよいと考えているだけだからです。
ですから、自社の「強み」を聞く際には
「どうして弊社の製品が選ばれたのか」について、選びやすいように項目を挙げながら聞くのが良いでしょう。
案外、自分たちにとっては「品質」だと思っていたことが、「全部お願いできるから」という理由だったことは多いものです。
競合他社と比較してみる
他社が真似できない唯一無二の機能を持った製品が売りの場合、それ自体が圧倒的な「強み」になりますが、ほとんどの製品やサービスの場合、同業他社のライバルが存在しています。
お客様が他社ではなく自社製品をなぜ選んでくれたのか、という視点でもう一度製品比較をおこなうようにしましょう。
そして「強み」が判明したら、その強化をおこなうことと同時に、他社製品を選んだ理由や、他社の方がまさっていた点などの、「弱み」についても認識することが必要です。
しかし、ドラッガーの
弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい
という言葉にも示されている通り、弱みの克服には限界があります。
大企業なら弱みの克服に手を回すことは可能かもしれませんが、社内リソースの限られた中小企業における優先順位は、あくまで「強み」の強化にあることを忘れないようにしたいものです。