副業・兼業とは、本業以外に行う仕事のことを指します。「本業が休みの日にアルバイトや日雇い派遣で働く」、「株や為替で資産運用する」、「ブログなどに広告を載せてアフィリエイトで報酬を得る」、などの様々な手法があります。
かつては企業側でも副業禁止の規定を設けるケースが多く、副業を推奨する企業はほとんど存在していませんでした。
しかし、厚生労働省が2018年1月に「モデル就業規則」を改定したのをきっかけに副業・兼業が注目されるようになってきました。
これまであった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定がなくなり、「労働者は、勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」となりました。つまり、副業・兼業ができることを国が明文化した形です。
また、働く側の環境や意識が大きく変わってきたことも、副業や兼業が広まった要因の一つと言ってもいいでしょう。
- 景気変動や新型コロナウイルス感染症などの影響を受け給与が激減し、今までの収入だけでは生活できなくなり、副業・兼業を行わざるを得なくなった人が多く出た
- ネットワークで行う仕事が増加し、テレワークの普及により副業・兼業に挑戦しやすくなった
- 通勤時間が必要のない、わずかな空き時間で行える副業を見つけやすくなった
このような理由が、大きく影響を与えていると言われています。
企業と働き手のメリット・デメリット
こうした流れの中、企業側では副業・兼業に対してどのような対応をすればよいのかを把握しておかなければなりません。
その際に企業や従業員にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかもきちんと知っておくことが必要となります。では、企業と従業員、それぞれのメリット・デメリットにはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
企業のメリット
従業員のスキルアップ
従業員は副業を行うことで、新たな知識やスキルを得ることができます。こうした新しい知識・スキルを自社の仕事にも生かしてもらえれば大きなメリットとなります。
優秀な人材の流出の阻止
優秀な従業員が自社では実現できない仕事を求めたとしても、副業・兼業の形であれば、自社に在籍したまま行うことが可能となります。つまり、人材流出を食い止めるための一つの手段となります。
企業の魅力アップ
多様性のある働き方を認めることで、働き手、あるいはこれから働く場所を決める人材にとって、自由に力を発揮できる魅力的な職場と認識されるようになります。
新しい人材、ノウハウの確保
逆に、副業の形で人材を受け入れることができれば、優秀な人材に働いてもらえる機会が増加し、持っているノウハウを自社で生かしてもらうこともできます。
企業のデメリット
情報漏洩のリスク
自社の社員が他社で働くことで、情報が漏れてしまう危険性があります。後述しますが、副業を認める場合、こうしたことを防ぐための取り決めをしておく必要があります。
健康管理や、事故など労災となった場合のトラブル
副業や兼業は、労働時間が増えるという側面があります。休息をとることが難しくなり健康管理の面でも課題があります。労災に関わるような事態が発生しても、本業、副業のどちらに原因があるのかわかりにくいケースも考えられます。これについても、あらかじめルールをきちんと作っておく必要があります。
従業員のメリット
収入アップ
従業員のメリットとしてまず挙げられるのが収入の増加です。
新しいキャリア・スキルを持つことができる
現在の会社では得ることのできない知識、スキルを副業によって養うことができますし、それは自分の新しいキャリアともなります。
自分の実力がわかる
現在の会社以外の場所で、自分がどの程度の力を持っているのかを知ることができます。つまり客観的な評価基準を身に付けることができます。
従業員のデメリット
プライベートの時間が減少する
当然ですが本業以外に他の仕事を行うということは、これまでプライベートの時間であったものを使うということになります。家族などがいる場合、一緒に過ごす時間も少なくなります。また休息時間も減り、健康面での心配もあります。
税金などの手続きが必要
税金の手続きなどを自身でやらなくてはならなくなります。税金の知識を新たに身に付けるか、個人的に税理士を雇うといった必要もあります。また雇用保険の適用などにも影響してきますので、しっかりと知識を身に付けておく必要があります。
副業・兼業を認めるうえで、企業がやっておくべきこと
社員に副業を許可、あるいは奨励するにあたっては、これまで必要のなかった新しいルール作りも必要になります。
例えば、個人事業主のような形での副業ではなく、他の会社に副業として雇用される場合など、労働時間の算定や社会保険の支払いについて新たに検討する必要もあります。また副業を行う際の申請についての取り決めも必要です。
情報の管理・労働時間の管理
労働基準法では労働時間を、自社と副業を行う他社の通算で算出することを定めています。1日8時間、週40時間の法定労働時間超を超えて労働させる場合は、時間外労働として割増賃金を支払わなければなりません。残業に該当する場合は、割増の賃金の支払いの必要がありますが、厚生労働省のガイドラインによると、一般的には後から契約した事業主に支払い義務があるとされています。こうしたケースについても、あらかじめルールを策定しておく方がよいでしょう。
社会保険の適用
雇用保険や社会保険は、一つの事業場のみでの加入となりますが、どちらの被保険者となるかの選択の基準や申請のための届け出には特別なルールがありますので、よくチェックしておく必要があります。基本的に働き手自身がメインとなる会社を選択し保険証などを発行する手続きを行うことになります。雇用保険についても、主たる賃金を受ける会社で加入することになっているので、通常は、本業である会社で加入することになります。
手当の取り決め
例えば通勤手当などは、法律で支払いが決まっている手当ではありませんので、会社ごとに就業規則に規定しておく必要があります。本業で通勤手当をもらい出社し、近くの会社で副業といったケースも考えられます。その場合、通勤手当はどうするのか。こうしたケースでもルールが必要となります。
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
厚生労働省で「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が公開されています。Q&A形式で副業・兼業についてまとめています。
副業・兼業を導入するのであれば、ぜひチェックしてください。
厚生労働省「副業・兼業」(外部リンク)