連載コラム 経理の疑問にお答えします
会社の利益と決算対策

会社の利益と決算対策

作成日:2021-02-24
最終更新日:2023-02-24

 

企業において、最も忙しい時期の一つが決算期です。
決算は1年間の総まとめであり、さまざまなことを検討しなければなりません。
その一つが、決算上の利益です。これをどのように見せるかは、金融機関や株主といった外部の利害関係者との関係に影響を及ぼすからです。
今回は、決算に向けて会社の利益について見ていきましょう。

 

決算の数字はどのような形にしたらいいのか

 

そもそも決算の数字はどのように着地させたらよいのでしょうか。
 
 多くの社長さんが「利益が出ないなんて恥ずかしい」と思う反面、「利益が出ると税金が掛かってしまう…」というジレンマに陥るでしょう。

 

 利益は出した方がいいのでしょうか?

 

 筆者の個人的な意見も含めていうと、「利益を出して税金を払いましょう」が正解
 なぜなら、現代社会において、利益の有無や税金の支払い実績は「信用度」の計測に用いられるからです。

 

会社の利益と信用

 融資の際、「決算書上の利益が出ていないと追加融資は難しいらしい」といった話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
これも、概ね正解です。

 

 信用情報を大事にする金融機関では、「返済可能であるか?」が最大の関心事です。

 

 毎期きちんと利益を出せていない会社は、この先手許資金が減少していくだけですから将来的に返済資金が不足する恐れがあります。
 そのため、銀行対策として、黒字決算はマストととらえた方がよいでしょう。

 

 また、税金の滞納がないこと、税金を支払っていることも信用度のスコアリングのポイントになっています。
融資申し込みに納税証明書が必要になるのもそのためです。

 

 海外の大企業などの過度な節税が問題視されるように、現代社会において、企業にはこれまで以上にクリーンな存在であることが求められるのです。
 

 

税金を払うのか、お金を使うのか

 また、決算の対策と称してさまざまなものにお金を使い、経費率を上げることを考える経営者もいるでしょう。

 

 しかし、前回のコラムでも確認したように、生命保険の支払いなど、お金をプールしながら節税をするという裏技的なやり方はけしからん、というのが現代の風潮です。
 そのため、さまざまな節税方法が法律によって封じられてきました。
 それでは、プールを考えずに、単にお金を使うというのはどうでしょう?
 経費を作るためにいろいろなものを購入したら、確かにその分利益は減ります。しかし、当然のことながら、使った分のお金も減ります。
 注意しなければならないのは、そのお金を使ったことによる節税メリットが、その使った経費の額のうち、税額相当額(中小企業の場合は支払額の概ね30%程度)しかないということなのです。

 

 もちろん、必要なものを前倒しで購入する分には問題ないでしょう。しかし、税金を減らしたいからと言って無駄遣いをするのは本末転倒。
使ったお金は無くなりますが、利益を出して税金を払えばそのお金の70%程度は社内にプールできるのです。

 

 つまり、お金を残したいのであれば「税金を払うこと」が最も正しい方法なのです。

 

物に投資する時代の終焉

 これまでの節税方法と言われるものは「物」にスポットを当てたものが多かったのですが、経済がシュリンクし、シェアリングエコノミーのような「物を持たない」ことが良しとされる現代において、過剰な設備投資は企業のフットワークを重くし、足かせとなります。

 

 大手企業でも自社ビルを売って賃貸にしたり、ビル内の一部をテナント貸しできるよう改築したりという動きが盛んになっています。

 

 テレワークなどが普及することを見越し、オフィススペースも将来は最小限で運営できるよう、今のうちに身軽にしているのです。

 
利益は社員のため時代に合わせた柔軟な投資を

信用度を上げるためにお金を使おう

 

 それでは、信用度を上げて、かつ、利益も大きく出さない方法で企業にメリットのある方法はあるのでしょうか?
筆者の個人的な見解ではありますが、最も効果のある方法は人件費です。
 前回確認したように、決算時に賞与を計上することは要件を満たせば合法的に経費算入できます。また、さまざまな福利厚生プランも要件を満たせば経費となります

 

 空前絶後の労働力不足の波はこれまで人頼みだった事業に大きく影響を及ぼしています。売上がどんなに見込まれても働き手が足りないため店が開けない、そういった状況がすでに多くの業種で見られているのです。

 

 そのため、多くの企業で優秀な人材の取り合いになっています。就職市場において、「ブラック企業」「ホワイト企業」などという言葉が蔓延しているように、今いる社員に対する投資をし、社員の信用度を上げることは、その先の就職市場へもつながってきます

 

 そのために、社内の労働環境を整え、労働条件や福利厚生を良くすることは、これから最も重要な投資になるのではないでしょうか。