最近「クラウドサービス」という言葉を本当によく耳にします。テレビCMやネット上の広告に触れているので「何となくこんなもの」ということは分かっている方も多いでしょう。しかし改めてその意味を説明するとなると、なかなか難しいのもクラウドサービスの特徴です。
そもそも名前からして実態がつかみにくい。クラウド(cloud)=「雲」ですから。これはユーザーがソフトウェアやデータの物理的な保存場所(パソコンやサーバーの設置場所)を知らず、まるで空に浮かぶ雲の中にあるコンピュータを利用するようなイメージからきているといわれています。
今回はクラウドサービスとは何か?その正体やメリット、デメリットについてお伝えします。
そもそも「クラウドサービス」とは?
クラウドサービスとは、これまで目の前にあるコンピュータで使っていたソフトウェアや作成したデータの保存を、ネットワーク経由で行うことのできるサービスです。
例えば、これまでなら文書や表などを作成する場合、自分のコンピュータにWordやPowerPoint、Excelをインストールする必要がありましたし、メールを使う場合にはOutlookなどのソフトを使う必要がありました。そして、こうしたソフトを使って作ったデータは、自分のコンピュータの中(ハードディスク)やUSBメモリ、外付けHDDに保存していました。
クラウドサービスは、こうしたソフトウェアを使ったりデータを保存したりする場所を、すべてネットワーク経由で提供するサービスです。インターネットでネットワークに繋がるパソコンであれば、ソフトウェアがパソコンにインストールされていなくても文書や表作成などの作業やデータの保存、取り出し、編集、メールの送受信などが行えるようになります。つまり、クラウドサービスの方でソフトウェアも保存先も用意してくれているということです。
例えば最も身近なクラウドサービスが、みなさんお馴染みのY!メールやGmailです。専用のソフトウェアをインストールしなくても、メールのやり取りや、送受信したデータの保存を自分のパソコン上ではなくネット上で行える。これがクラウドサービスの典型的なものです。
クラウドサービスのメリットは?
自分のパソコンにソフトウェアはすでに入っているし、そのパソコンにデータを保存しておくことにも何も問題はない。なんでわざわざクラウドサービスを、と思われる方もいるかもしれません。しかしクラウドサービスを利用することで、個人レベルはもちろん会社にとってもさまざまなメリットが生まれます。
個人がクラウドサービスを利用するメリット
複数人でデータの共有ができる
これまでデータをやり取りするときは、メールで送付したりメモリに保存して持ち運んだりしていましたが、クラウドサービスを使えばそうした手間が不要になります。保存場所のURLを相手に知らせれば、保存されたデータを複数人で共有することができます。
端末の自由度が上がる
クラウドサービスはほとんどの場合、パソコンだけでなくタブレットやスマホでの利用にも対応しています。つまり、手元にパソコンがなくてもデータに自由にアクセスすることができるようになります。
ソフトウェアをインストールする必要がない
クラウドを使わない場合、文章を書いたり表作成を行ったりメールをしたりするためには、それぞれ専用のソフトウェアをパソコンにインストールする必要があります。またバージョンアップなどの作業も必要です。しかしクラウドサービスではすべてクラウド側にソフトウェアがあるため、その必要がありません。
使える機能が広がる
クラウドサービス側でサービスや機能をどんどん追加してくれるので、好きな機能を選ぶだけで使うことができます。
企業がクラウドサービスを利用するメリット
導入ハードルが低い
クラウドサービスには、サーバーやソフトウェアの設定・管理も含まれているので、会社に専門知識を持ったスタッフがいなくてもすぐに導入できます。
テレワークなどの遠隔地でも業務ができる
クラウドサービスは、基本的にインターネットに接続できればどこからでも利用できます。つまりクラウドサービスを活用すれば、テレワークなどでも、お互いがオフィスにいるのと同じようにデータを共有することが可能となり、スムーズに業務を行うことができます。
さらに外出先でもアクセスすることができるなど、利用シーンも広がります。
必要な機能だけを選べる
クラウドサービスにはさまざまなコースが用意されていることが多く、自社の使いたい機能だけを選んで使用することができます。また、利用人数や利用期間なども選べるので、コスト的にも無駄が抑えられます。
BCP対策ができる
ほとんどのクラウドサービスは、サーバー(コンピュータ)を多重化して管理しています。そのため、ある地域で災害などによる障害が発生して保存しているデータに影響が出たとしても、その他の地域にあるデータセンターに切り替えてサービスを継続して利用することができます。つまりクラウドサービスの活用は、災害時等におけるBCP(事業継続計画)対策にもなります。
コスト削減効果
クラウドサービスの場合、自社でシステムを構築する費用がかかりません。サーバーを置くスペース、それを動かすための電気代、メンテナンス費、セキュリティ対策費、システムのアップデートなども不要なためコストの軽減に繋がります。
クラウドサービスを利用する際に考えられるデメリット
カスタマイズ性が低い
クラウドサービスのデメリットは、カスタマイズ性が低いことです。使える機能はサービスとして提供されている範囲内に限られますので、自社の事情に合わせたカスタマイズは限られます。
セキュリティをサービス提供側に依存する
クラウドサービスのセキュリティは、その大部分をサービス提供者側に依存しています。万全のセキュリティが施されている場合がほとんどですが、ユーザーがさらに高いレベルのセキュリティを望んだとしても、相手次第ということになります。重要なデータを社外に置いておくということですので、情報漏洩が起きる可能性もゼロとはいえません。
データ通信の混雑や障害
クラウドサービスを活用するユーザーが増加することで回線の負担が増え、通信速度の低下やアクセス障害の発生なども考えられます。通信そのものに障害が発生した場合、サービス自体が使用できなくなるケースも考えられます。
サービス終了のリスク
サービスを提供する企業が倒産してしまう可能性もゼロではありません。この場合、当然ながら提供されているサービスも使えなくなってしまいます。こうしたリスクを最小限に抑えるには、信頼できる企業が提供するクラウドサービスを選択する必要があります。
リモートワークで業務を行う機会が増加し、クラウドサービスを活用する企業もますます増えてきました。
クラウドサービスの導入はさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。費用と効果、安全性の確認、そして自社にあったサービスの見極めが大切です。