以前であれば、会社にいれば仕事中、家にいれば私生活と、例外を除けばそんな区分けが簡単にできました。
経費についても、この区分けを基本に行えば問題ありませんでした。
しかしテレワークが当たり前となった現在、どこまでを経費として扱えばよいのか、その判断に迷うケースも出てきました。いったいテレワーク時に発生する経費はどの範囲までなら認められるのでしょうか。
仕事を自宅で、その経費は
オフィスで業務上発生する通信費や光熱費、事務用品代やパソコン代などの費用は経費として認められています。
しかし、テレワークの機会が増え、従業員の自宅など、オフィス以外の場所で仕事のための費用が発生することも多くなっています。
例えば、仕事のために家のインターネット回線を仕事に使用するなどもこれに当たります。こうした費用はどのように考えればよいのでしょう。
一般的に経費の対象となるものは「事業を行うために使用した費用」であることが基本です。これはオフィスではもちろん社員の自宅であっても代わりません。
その考え方からすると社員が業務のために使用したものの費用は、自宅で使用したとしても経費として計上できる可能性があります。
例えば、文房具や事務用品など業務を行う上で必要なものは自宅で使用したとしても、「消耗品費」として経費とすることができます。社員が自分で購入した場合でも、領収書を提出してもらうことで清算ができます。
テレワーク用のパソコンやスキャナ、プリンターなどの代金も、会社が購入し、従業員に貸し、使用後に返却を受けるのであれば、そのまま代金を経費計上できます。使う場所の中心が自宅になっただけということで、変わりはありません。
外で仕事をした場合
では社員が自宅以外、例えばコワーキングスペースやカフェで仕事をした場合、その場所代などはどう考えれば良いのでしょう。
これも「事業を行うために使用した費用」が経費であるという基本は変わりません。業務をするために必要な場所を借りるための費用ですからコワーキングスペースの使用料、カフェであれば飲み物代などを『会議費』として計上することが可能です。
ただしカフェなどで食事などを業務の合間にとった場合、業務を行うためではなく飲食が目的ですので経費として認められません。
一部分が計上できるもの
判断が難しいのが、通信費や光熱費などの扱いです。
インターネット回線はほとんどの場合、個人が自宅用に契約しているものを使用しています。別に仕事専用の回線を引くようなことはありませんし、必要もありません。しかし、この回線をテレワーク時には仕事用、つまり「事業を行うため」に使用しています。
この場合、従業員がプライベートで使用している分と、会社の業務として使用している分とで分けて(按分して)、業務分を計上することが可能です。按分とは、定めた基準で割り振ることです。
例えば、従業員が自身のインターネット回線をプライベートの用途で50%、業務の用途で50%使用していたとすると、利用料金の50%を会社の経費として計上するという具合です。水道光熱費なども同様に、業務用途分と生活用途分とで按分します。
ちなみに、国税庁からこの按分のことを含む経費の考え方について『在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)』というものが公開されています。その中で特に関係のありそうな部分をピックアップしてみましょう。
(国税庁『在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)』より抜粋)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
電話料金(通話料)
通話料については、通話明細書等により業務のための通話に係る料金が確認できますので、その金額を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
つまり按分の割合を決めるときには、きちんと裏付けとなる資料を確認して決めましょう、ということです。
通信費
業務のために使用した基本使用料や通信料等=従業員が負担した1カ月の基本使用料や通信料等×(該当月の在宅勤務日数/該当月の日数)×50%
例えば通信費が9,000円。30日ある月に20日働いたとすると、
9,000円×20/30×50%=3,000円
が経費として認められることになります。
電気料金
業務のために使用した基本料金や電気使用料=従業員が負担した1カ月の基本料金や電気使用料×(業務で使用した部屋の床面積/自宅の床面積)×(該当月の在宅勤務日数/該当月の日数)×50%
住居費
テレワークを行う場合、自宅のスペースの一部を仕事場として利用することになります。この場合の考え方については『厚生労働省「自営型テレワークに係る就業環境の整備事業」』のFAQの中で下記のような回答があります。
「仕事で必要なスペースであることを明確に証明できれば、そのスペースの割合だけ(按分と言います)経費として認められます。
賃貸の場合は、家賃に対して、自宅全体の床面積に対する仕事スペースの床面積の比率を適用して経費を計算します。なお、住宅ローンを支払っている自宅で仕事をしている場合は、ローンの金利の比率を適用します。
これからテレワークはますます普及し、新しい経費の形もさらに登場してくるでしょう。
混乱が起きないうちに、按分の割合や在宅勤務手当のルールなど経費に関する社内規定をテレワークの実情に合わせて整備しておく必要があるかもしれません。