属人化の問題と解消方法
最終更新日:2023-04-19

 近年、生産性の向上や効率化が盛んに言われる中で課題となっていることの一つに「業務の属人化」があります。

 

 業務の属人化とは、特定の社員だけがある業務を担当し、そのノウハウや作業方法についてはその社員しか分からないという状況になることです。
 
 その社員が病気になったり急に辞めたりした場合、業務の内容が誰も分からず、業務を進めることができない状況となり大きな支障が生じます。
 そこまでいかなくても、「今日は担当者が休みで、その件についてはちょっと不明です」といったことも頻発してしまいます。

 

属人化のデメリット

 属人化が会社に与えるデメリットを改めて確認してみましょう。

 

業務の停滞

 業務の進め方はもちろん進捗状況もその担当者しか知らないため、担当者が多忙になった際、即座に業務が停滞します。担当者が病気になったりした場合、その業務自体がストップしてしまうことにもなります。

 

知識や技術が継承されない

 蓄積してきた知識や技術も、担当者がいなくなればすべて失うことになってしまいます。外部から見れば、会社自体の技術や生産力が低下したという判断につながる可能性も高いでしょう。

 

品質が不安定になる

 属人化している業務にはマニュアルも存在していないことが多く、本人の勘頼り、作業頼りとなってしまいがちで、品質がまちまちになってしまう可能性が常に存在しています。他の社員が作業を把握していないことも多く、他者からの目による品質チェックもできず、品質の低下を招く可能性もあります。

 

評価ができない

 属人化している作業は、作業を行っているのがその担当者だけであるため、効率や質などの比較が難しく、適正な評価を行うことができません。
 また、担当者にしかできない作業であるため業務が集中することもあり、時間的に長時間労働を強いることにもなり、「担当者だけが頑張っている」といった間違った評価にもつながりがちです。

 

特に属人化してはいけない業務

 さまざまな業務の中でも、特に属人化を防がなくてはならない分野があります。
 

バックオフィス業務

 経理や総務などのバックオフィス業務は、特に属人化してはいけない分野です。
 経理や総務に求められるのは、業務の正確さと一貫性です。誰が担当しても同じクオリティを保ち、ルールに則って正確に処理することが求められる業務だからです。
 また、担当者が不在のときに業務が停滞してしまうといったことも起こってはならない現場です。個人の判断や力に大きく頼る属人化は特に避けなければいけません。

 

問い合わせ窓口など

 ユーザーサポートなど、お客様からの問い合わせに対して返答する業務も属人化は避ける必要があります。対応が担当者によって異なるようでは大きなトラブルを招く可能性があります。

 

属人化を招く原因

 業務の進め方やノウハウが属人化してしまうのには、いくつかの原因があります。

 

人手や時間がない

 ノウハウや業務を共有したいと思っていても人手に余裕がない、といったケースは属人化の状態を生みやすくします。
 
 また、目先の仕事に忙殺され、業務やノウハウを引き継ぐ時間的な余裕がないというケースも属人化を生みます。時間的余裕がないというケースでは「自分がやった方が早い」というパターンが繰り返され、結局その担当者がどんどん忙しくなるといったことにもなりがちです。

 

マニュアルがない

 業務やノウハウに関するマニュアルがないというケースも属人化を生みやすい環境です。
 
 マニュアルがない、ということは業務の進め方が標準化されていないということです。
 マニュアル化を妨げる原因はさまざまですが、担当者が「自分がいるのだから不要」と考えているケースや、そもそも属人化の張本人である担当者の存在を良いことに、マニュアル化しようという動きそのものがない、というケースもあるようです。

 

属人化を解消するために

 属人化を解消するための最も効果的な方法は、業務を標準化することです。誰もが同じ方法で業務を進めることができ、同じ結果を得ることができれば、属人化も解消されます。
 
 業務を標準化するためには、次のようなことを実行します。
 

ワークフロー(業務の流れ)の可視化

 業務の一連の流れで発生する作業や、関係する部署や人物、やり取りされる情報(文書・データなど)、手続きを一つ一つ洗い出し、誰もが分かる形で一覧化します。
 そうすることで、誰もが業務、作業の流れを知ることができるようになるとともに、どの部分が属人化していたのかが判明します。

 

マニュアルや手順書の作成

 ワークフローが完成したら、一つ一つの業務についてマニュアルや手順書を作成します。
 
 書類の書き方、現場であればどのスイッチを押すのか、こうした具体的な作業内容や、その際の注意点などもすべて書き起こしていきます。誰が作業を行っても、その通りにやれば間違いなく作業ができるような内容としていきます。

 

継続的な評価・改善

 業務標準化をスタートさせた後も、それがきちんと機能しているのか、作業的な質が保たれているのかを継続的にチェックします。
 
 PDCAと呼ばれるもので、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもの。Action(改善)まで行ったら、再びPlan(計画)に戻り、継続した評価を続けていきます。

 

 属人化には会社にとってデメリットがある一方、メリットもゼロではありません。優秀な個人の力は会社に利益をもたらしますし、それがお客様の信頼につながる例も多く存在します。
 
 属人化をなくすためには、メリットとデメリットをきちんと評価し、個人の力を会社全体の力に結びつける。こうした視点を持つことが必要でしょう。