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アノテーションとは?意味や種類、活用例をご紹介!

AI(人工知能)による機械学習などの研究・開発が進む中、AIに正しくデータを認識させるために「メタデータ」を付与する作業が必要です。その作業を「アノテーション」と呼びます。AI開発には欠かせない取り組みです。

今回は、アノテーションの意味や種類、活用例、AI開発におけるアノテーション業務の実施方法をご紹介します。

アノテーションとは?意味を解説!

アノテーションの意味を確認していきましょう。

アノテーションとは?

アノテーションとは、言葉自体の意味は「注釈」「注解」ですが、データ関連の用語としてのアノテーションは「ラベル付け」「メタタグを付与する作業」などと言い換えることができます。

データのラベル付けやタグ付けとは、端的にいうとデータをわかりやすくするための「印付け」です。

近年は主にAI(人工知能)モデル開発時の学習用に使われるデータにアノテーションを行うケースが増えていますが、AIが学習を行う際に、より正しくデータを認識できるように、あらかじめ印をつける作業を指します。

AIモデル開発における位置づけ

一般的に、AIモデル開発は、次の流れで進んでいきます。その中で、アノテーションはデータ収集と調整の次の段階に該当します。

学習データとして利用するデータを整えた後、よりAIが効率的に学習できるようにラベル付けを行います。

アノテーションの種類

アノテーションには、次の種類があります。

画像・動画アノテーション

画像や動画などのデータには、さまざまな物体が写り込んでいますが、それらのうち、AIに学習させたいのは一部の情報だったとします。例えば車と人が写っている写真のうち、車を車と認識し、人を人と認識するように、種類や位置、大きさ、色、方向などにラベル付けします。

画像・動画のアノテーションの主な種類をご紹介します。

物体検出(オブジェクトディテクション)

物体ごとに矩形領域で囲み、注釈をつけていきます。例えば自動車とバイク、歩行者などを四角形で囲み、それぞれに意味をラベル付けしていきます。

領域抽出(セマンティックセグメンテーション)

画像内を領域ごとにカテゴリー分けをして色塗りしていきます。例えば、人と家具が映り込んでいる写真では人の領域は「人」、家具の領域は「家具・物体」などのカテゴリーに分類します。

キーポイント

画像の中の人や物体を線として捉え、キーポイントと呼ばれる線分を用いてラベル付けします。人の姿勢やポーズなどの判別に活用されています。

音声アノテーション

音声の場合、発音やアクセント、話者、言葉の意味などに一つ一つラベル付けします。音声をテキストに変換したり、発話の区間を検出したり、話の内容の意図を抽出したりできるAIモデルの構築などに利用されます。

テキストアノテーション

大量の文書データのうち、既存ルールに従ってラベル付けすることで、文書の分類判別、内容の分析などが行えるAIモデル開発が可能になります。
テキストへのアノテーションにより、人名、場所、組織名などの特定の用語を抽出したり、テキストの意図、感情やニュアンスの分析、文法構造の解析が可能になります。

アノテーションの実施手順

アノテーションがAIの精度を左右する重要な作業であることは理解できても、「具体的に何を、どのような順番で進めれば良いのだろう?」と迷う方も多いのではないでしょうか。計画なしに進めると、途中で手戻りが発生したり、品質が安定しなかったりするリスクがあります。AI開発の現場で失敗を防ぐために、アノテーション実施の具体的な手順を6つのステップで見ていきましょう。

Step 1:目的と品質のゴールを明確に定める

まず、「どのようなAIモデルを開発したいのか」という最終目標を具体的に決めることが重要です。そのうえで、「どのような種類のアノテーションが必要か」(例えば、画像内の物体を囲むのか、領域を塗りつぶすのか)、そして「許容できるアノテーションの誤差はどの程度か」という品質基準も明確に定めておきます。この最初のゴールの設定が、その後の全ての工程の方向性を決定づけるのです。

Step 2:アノテーションのルールブック(ガイドライン)を作る

作業者によってアノテーションのやり方が異なると、教師データに「バラつき」が生じ、AIが誤って学習してしまいます。これを防ぐため、誰が作業しても同じ結果になるように、具体的な作業手順や判断基準、例外的な処理のルールを詳細に記述したガイドライン(ルールブック)を必ず作成します。このガイドラインこそが、高品質な教師データを作るための生命線となります。

Step 3:学習データを準備・選定する

アノテーションの対象となる画像や音声などの元データを収集します。この際、単に数を集めるだけでなく、AIの学習に必要な量と多様性が確保されているかを確認することが大切です。特定の条件や情報に偏ったデータセットでは、実環境で使えないAIになってしまうため、データの「偏り(バイアス)」を防ぐよう注意が必要です。

Step 4:実際にアノテーションを実行する

Step 2で作成したガイドラインと、専用のアノテーションツールを使用して、データへのタグ付けやマーク付けといった作業を実施します。効率的なツールを選定し、作業者がスムーズに作業を進められる環境を整えることが、作業スピードと精度の向上に直結します。

Step 5:レビュー(品質チェック)と修正を行う

アノテーションが完了したデータは、必ず別の担当者や管理者がチェック(レビュー)を行います。ガイドライン通りに作業が行われているかを確認し、間違いがあれば作業者に修正を指示します。この「ダブルチェック体制」を導入し、品質が担保されたデータだけを次に進めることが不可欠です。

Step 6:AIの学習に活用し、精度を評価する

レビューを通過した高品質なアノテーションデータを、いよいよAIモデルの学習に投入します。そして、学習の結果としてAIの精度が期待通りに達成できているかを評価します。もし精度が不十分な場合は、アノテーションのルールやデータセットを見直すなど、PDCAサイクルを回して改善を続けていきます。

アノテーションは地道な作業ですが、これらのプロセスを丁寧に進めることで、時間や手間を無駄にせず、私たちが目指す「実用性の高い賢いAI」の実現に大きく近づけるはずです。

アノテーションの業務への活用例

アノテーションは、すでに多様な業種と分野で活用されているAIモデルの学習データにおいて実施されています。具体的な活用例を見ていきましょう。

自動運転

自動運転の分野では、車に搭載されている車両認識の画像認識技術のAIモデルに活用されています。例えば自動車の周囲の車両や歩行者、信号、標識などを自動認識するためには、精度の高いアノテーションが必要です。車両、歩行者などを正確に認識するためにラベル付けすることで、安全運転が可能になります。

製造業の製造プロセス

製造業においては、近年、製品に対する不良品検知の画像認識技術が利用されていますが、不良品か否かを判別するためには、アノテーションが欠かせません。高精度なアノテーションデータを大量に準備すれば、AIモデルは不良品と正常な製品との違いを高精度に見分けることができます。

医療

医療分野では、CTやMRI、X線などの画像検査に画像認識技術が利用されています。画像内に現れる疾患部位を検出することで、医師の診断をサポートします。

防犯

防犯分野では、監視カメラの映像解析に利用されています。人、車両、その他の物体などにラベル付けすることで、不審者の侵入や異常検知が可能になり、警備員の負荷を軽減します。

自動翻訳

音声アノテーションの具体例として、自動翻訳があります。言語のラベルを付けた音声データを自動翻訳システムに搭載することで、音声の言語や意図の正確な把握を助けます。その結果、自動翻訳システムにおいてより自然な翻訳結果が期待できます。

問い合わせ対応チャットボット

ECサイトなどに備わる顧客向けのチャットボットに、テキストアノテーションを行った学習データを学習させることで、より顧客の質問の意図を正確に、ニュアンスも含めた解釈が可能になります。

AI開発におけるアノテーション業務のやり方

AI開発におけるアノテーション業務のやり方は、大きく手動で行う方法と自動で行う方法の2通りに分かれます。

手動アノテーション

人間がデータに対して、一つ一つ、ラベル付けを行う方法です。人間が判断してラベルを付けるため、精度が高いのが特徴です。しかし画像の一部分ごと、一つ一つにマーキングしていく作業をイメージすればわかる通り、精度を上げようと思えば思うほど手間と時間がかかります。また作業者によって精度が変わる恐れもあり、それらの課題の解決が急がれています。

自動アノテーション

自動アノテーションとは、主にツールを用いてアノテーションを半自動化する方法です。現在は完全にツールに任せることができない状況ですが、簡単な設定だけで自動でアノテーションを行ってくれるツールが開発されています。

自動アノテーションは手動作業を削減し、業務効率化を実現します。また精度の均一化にも寄与します。一方で、ツールによる誤検知でアノテーションのミスが生じることは避けられません。そうした中、近年は自動アノテーション技術自体にAIを活用する流れも出てきています。

現状は、手動と自動を組み合わせて精度を最大化する方法が取られています。

専門企業に外注する

アノテーションには専門的な技術や多くの作業者の確保が求められるため、現状はアノテーション専門企業に外注するのが一般的です。今後、自動化技術の進化により、社内で実施できる日が来る可能性もありますが、専門スキルや知見を活用できる点において、外注は高い価値があります。

アノテーション実施にあたっての注意点

アノテーションの進め方がわかったら、次は「失敗しないための落とし穴」を知っておきましょう。アノテーションの品質が悪ければ、どんなに優秀なAIモデルでも期待通りの働きはできません。AIの精度をしっかり引き出すために、特に気を付けるべきポイントをまとめました。

品質管理の徹底:「曖昧さ」を放置しない

ルールブック(ガイドライン)の定期的なアップデート:

作業を進めると、「このパターンはどうするの?」という例外的な疑問が必ず出てきます。その都度ルールブックに反映し、全員で共有することが品質のバラつきを防ぐ最大のコツです。

アノテーターへの研修をしっかり行う:

作業開始前に、必ず習熟度テストを行いましょう。特に難しいアノテーション作業は、スキルを持ったメンバーに任せるなど、適材適所の配置を心がけます。

ダブルチェック体制の徹底:

複数の人がチェックする体制を組み、作業者による判断のブレを修正します。これにより、客観的で安定した高品質な教師データが出来上がります。

データとセキュリティの確認

データの「偏り(バイアス)」を防ぐ:

AIは学習した通りにしか動けません。特定の年齢層や性別、環境に偏ったデータで学習させると、実社会で使えないAIになってしまいます。できるだけ多様なデータを集めるように注意しましょう。

情報漏洩対策を万全に:

顧客情報や機密情報を含むデータを扱う場合、セキュリティ対策がしっかりしているアノテーションツールや、信頼できる作業環境を選ぶことが大前提です。

アノテーションの品質=AIの品質、といっても過言ではありません。少し面倒に感じても、「曖昧にしない」という姿勢と、チェック体制をしっかり構築することが、あなたのAIプロジェクト成功の鍵を握っています。

まとめ

アノテーションは、AIモデル開発に欠かせない業務であり、専門スキルと高い精度が求められます。すでに多様な分野で活用されており、自動アノテーション技術も進化を続けています。

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