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マルチモーダルAIとは?シングルモーダルAIとの違いや活用法について解説

AIのビジネス活用が進んでいますが、近年は複雑なタスクにも対応可能なマルチモーダルAIの技術が発展しています。既存のAIモデルのマルチモーダル化も進んでおり、今後はさらに発展していくと考えられます。
今回は、マルチモーダルAIの概要からシングルモーダルAIとの違い、マルチモーダルAIの活用法、活用メリット、今後の展望までご紹介します。

マルチモーダルAIとは?

まずはマルチモーダルAIの意味とシングルモーダルAIとの違い、代表的なマルチモーダルAIをご紹介します。

マルチモーダルAIとは?

マルチモーダルAIとは、テキスト、画像、動画などの複数種類のデータを統合して処理できるAI(人工知能)のモデルです。まるで人間が五感を通じてさまざまな情報を統合的に判断するプロセスのように、複数のデータを組み合わせることにより、深い理解や洞察が可能です。

シングルモーダルAIとの違い

従来の単一種類の情報をもとに処理や判断を行うAIを、マルチモーダルAIに対して、シングルモーダルAIと呼びます。マルチモーダルAIとシングルモーダルAIとの違いは、その処理と出力結果にあります。

マルチモーダルAIはテキスト・画像・音声・動画など複数のデータを統合して処理することから、それぞれのデータが補完し合い、精度の高い表現や判断、予測などを可能にします。そのため、シングルモーダルAIと比較し、精度が高く、より複雑な問題へと対応が可能です。例えば、シングルモーダルAIは「音声をテキスト化する」などの単純な出力に留まる一方、マルチモーダルAIは「音声と画像をもとにテキスト化し、より深く洞察する」といったことが可能です。

代表的なマルチモーダルAI

代表的なマルチモーダルAIの例をご紹介します。

Gemini
Googleによるマルチモーダルモデルで、テキスト・画像・音声・動画を統合的に処理する能力があります。クリエイティブなコンテンツ生成に長けています。

GPT-4o
OpenAIが2024年5月に発表した生成AIであるChatGPTのモデルで、テキスト・画像に加え、音声も統合的に処理できます。チャット形式でテキストだけでなく画像や音声も駆使して回答を返すことが可能です。

Microsoft Copilot
MicrosoftによるマルチモーダルAIで、WordやExcelなどのOffice製品との連携が可能です。日々の業務効率化に役立ちます。

Claude
Anthropicが開発したマルチモーダルAIで、大量データの読み込みが可能であり、高いタスク処理能力を備えている点などが特徴です。

CLIP
OpenAIが2021年2月に発表したマルチモーダルAIで、画像とテキストを関連付ける能力に優れています。文章からの画像生成や多様な物体検出が可能です。

マルチモーダルAIの活用法

マルチモーダルAIは、次のような用途で活用できます。

データ解析結果のビジュアライズ

データ解析を行った後、テキストだけでなく、グラフなど視覚的にわかりやすい図や画像にてビジュアライズ可能です。解析結果の理解が進むことで、共有や利活用を促進できます。

製造現場の異常検知システム

工場などの製造現場では、異常検知システムにマルチモーダルAIを利用することで、複数のデータを組み合わせた分析を行えます。異常が検知されればアラートが上がるため、未然に異常を防ぐことができます。

完全自動運転

自動車の自動運転技術は、ドライブレコーダーの映像や音声、位置情報などの複数の情報を統合し、道路状況の的確な把握と安全性向上に貢献しています。

監視カメラ

監視カメラにマルチモーダルAIを搭載すると、映像と音声の両方から映像解析が可能になり、より高精度な解析が可能になります。

医療分野

医療分野では、AIが診断や診療に活用されていますが、マルチモーダルAIにより疾病の早期発見や治療計画の効率化を実現することで医療従事者の負担を軽減します。

マルチモーダルAIがもたらすビジネスへのメリット

マルチモーダルAIを活用することにより、次のようなビジネスメリットが期待できます。

異常検知や防犯対策の高精度化

先述の通り、マルチモーダルAIは異常検知や監視カメラにおける防犯対策で役立てられていますが、従来の人やコンピューターが実施していた同様の仕事の高精度化が期待できます。その結果、よりリスク対応を強化できます。

判断の質の向上

複数種類のデータをもとに判断するため、判断の質の向上が期待できます。その結果、シングルモーダルAIと比較して、複雑かつ高度なタスク処理が可能になるでしょう。

業務効率向上

AIは人による業務を自動化し、業務効率向上を実現しますが、マルチモーダルAIはより一層、効率を向上させます。

CX(顧客体験)の向上

近年は、顧客体験であるCXの向上・改善への取り組みが注目されていますが、マルチモーダルAIによりさらなるCX向上が期待できます。例えばSNSにおける自社製品に対する口コミ投稿のうち、付随する画像も含めて解析することで、より深い部分での顧客ニーズを抽出できることもあります。その顧客ニーズデータを用いてサービスの質を高める改善も可能です。

マルチモーダルAIの課題と未来の展望

マルチモーダルAIは、さまざまな効果が期待できる一方で、利用に際しては次の課題に直面します。

課題

データ処理に負担や時間がかかる
マルチモーダルAIは、シングルモーダルAIと比較し、取り扱うデータの種類が増え、膨大になります。取り扱う技術や計算基盤、解析方法の準備も必要になる上に、タスク処理に時間を要するなど、人が対応する部分の負担が増えたり、工数が増す恐れがあります。それに対応できる社内体制や環境が必要になります。

判断の根拠が見えにくい
複雑なタスクを多様な判断でこなすマルチモーダルAIは便利な一方で、人にとってプロセスが見えにくい点があります。判断根拠を検証する必要があるケースでは一定の困難さを伴うでしょう。

正確さについては人によるチェックが必要
AIの判断はまだ完璧とは言えません。そのため誤った判断について検知する人による体制も求められます。

徹底したセキュリティ体制が必要
取り扱うデータ量や範囲が増えることで、情報漏洩などのセキュリティリスクも高まります。AIが機密情報を学習しないようにするなど、徹底したセキュリティ対策が求められます。

マルチモーダルAIは、今後も発展が見込まれます。未来の展望を確認しておきましょう。

未来の展望

セキュリティ強化・軽量化により膨大なタスクが可能になる
上記に挙げた課題に対応するべく、大規模な基盤やセキュリティ強化などの万全の環境と体制を整えると同時に軽量化を進めることで、マルチモーダルAIの利点をさらに活用できるようになるでしょう。より膨大なタスクをこなせるようになる可能性もあります。

パーソナライゼーションの促進
従来のAIも顧客のニーズや嗜好を分析し、レコメンドが可能でしたが、マルチモーダルAIであればテキスト情報のほか、画像や音声、センサー情報なども含めた情報分析により、さらに顧客に最適化された体験を提供できる見込みがあります。その結果、パーソナライゼーションの促進が期待できます。

まとめ

マルチモーダルAIは、データ解析結果のビジュアライズから異常検知システム、完全自動運転、監視カメラ、医療分野までさまざまな業界やシーンで活用が進んでおり、業務効率化や顧客体験の向上など多様な効果が期待できます。

今後もさらに進化することで膨大なタスクを担える可能性があります。ぜひ今からマルチモーダルAI導入を進めましょう。

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