企業が知っておくべきAI活用におけるリスクとその対策とは
現代のビジネス環境において、AI(人工知能)の導入は競争力を高めるための重要な戦略となっています。しかし、AIの活用には多くのリスクが伴います。データの偏りやセキュリティの脆弱性、倫理的な問題など、これらのリスクを無視すると、企業にとって重大な損失を招く可能性があります。
本コラムでは、AIを活用する際のリスクやリスクマネジメントの方法について、詳しく解説していきます。
企業が知っておくべきAI(人工知能)のリスクとは
はじめに、AIにはどのようなリスクがあるのか、以下にて詳しく解説します。
AIを保有する際のリスク
1.情報漏洩
AIシステムは大量のデータを処理するため、情報漏洩のリスクが高まります。特に、クラウドベースのAIソリューションを使用する場合、外部からのサイバー攻撃や内部の不正アクセスによって機密情報が流出する可能性があります。情報漏洩は企業の信頼性を損ない、法的な罰則を受けるリスクもあります。
2.プライバシーの侵害
AIはデータを大量に収集・分析するため、個人情報を持ち出したことによるプライバシーの侵害も懸念されます。特に、顔認識技術や音声アシスタントのようなデータ収集が日常的に行われる場合、個人のプライバシーが侵害されるリスクが高まります。GDPRなどの厳格なプライバシー規制に違反する可能性もあり、企業は慎重な対応が求められます。
3.プロンプトインジェクション
プロンプトインジェクションとは、ユーザーが意図的にAIの指示や質問に不正な入力を組み込むことで、AIの動作を予期しない方法で操作する技術です。これにより、AIが誤った情報を生成することや、セキュリティリスクを引き起こす可能性があります。例えば、特定のフレーズを入力するとAIが機密情報を漏らすように仕向けることができます。対策としては、入力内容の検証やフィルタリング、AIモデルの適切なトレーニングが重要です。
AIを活用する際のリスク
1.権利侵害
AIが生成するコンテンツや分析結果が他者の著作権や特許を侵害するリスクがあります。例えば、AIが生成した文章や画像が既存の著作物に酷似している場合、著作権侵害として法的な問題が発生する可能性があります。そのため、企業はAIが生成するコンテンツの権利関係を十分に確認する必要があります。
2.ハルシネーションの発生
AIは時折、実際には存在しない情報を生成する「ハルシネーション」を起こすことがあります。これにより、誤った情報が提供されるリスクがあり、特に医療や金融などの重要な分野では深刻な問題となります。AIの出力結果を人間が適切に検証するプロセスが不可欠です。
3.法令違反
AIの利用が法令に違反するリスクも存在します。例えば、EUのAI規制(EU AI Act)では、高リスクAIシステムに対する厳格な規制が設けられており、これに違反した場合、企業は高額な罰金を科される可能性があります。このように、AIの利用に際しては、各国の法令や規制を遵守することが求められます。
【注目】EUのAI規制案
EUは、基本的権利、民主主義、法の支配、そして環境の持続可能性を保護するため、AIリスクに対する包括的な規制を導入することを決定し、2025年までに適用を開始する予定と発表しています。
この規制案は、リスクベースアプローチに基づいてAIシステムを4つのカテゴリーに分類し、それぞれに応じた規制を設けるものです。以下にて、詳しく解説します。
1.最小限のリスク
このカテゴリーには、AI支援のスパムフィルターやビデオゲームのAIなど、日常的に使用されるがリスクが低いシステムが含まれます。これらのシステムには特別な規制は設けられません。
2.限定的なリスク
このカテゴリーには、チャットボットや従業員管理システムなどが含まれます。これらのシステムは、透明性や説明責任の確保が求められ、ユーザーに対してAIであることを明示する必要があります。
3.高いリスク
このカテゴリーには、医療診断システムや自動運転車などが含まれます。これらのシステムは、厳格なデータガバナンス、リスク評価、監査、そして人間の監視が求められます。
4.許容されないリスク
このカテゴリーには、社会的信用スコアリングシステムや生体認証による監視システムなどが含まれます。これらのシステムは、基本的権利を侵害する可能性が高いため、原則として禁止されます。
EUのAI規制案は、AI技術の発展を阻害することなく、そのリスクを最小限に抑えることを目指しており、この規制案が適用されることで、AI技術の透明性と信頼性が向上し、消費者と企業の双方にとって安全で信頼できる環境が整うことが期待されます。
世界のAIガバナンスに大きな影響を与えると言われており、今後の動向にも注目です。
AI活用において重要なリスクマネジメント
続いて、AI活用において重要なリスクマネジメントについてご紹介します。
事実確認・リライト
AIを活用する際には、まずデータの事実確認が重要です。AIは与えられたデータに基づいて分析、学習、判断を下すため、データの正確性がそのまま結果に影響します。
不正確なデータや偏ったデータを使用すると、AIの判断が誤ったものになる可能性が高まります。そのため、データの収集段階での事実確認と、必要に応じたリライトの作業が必要です。
法令遵守
AIの活用には法令遵守が求められます。特に個人情報保護法やGDPR(一般データ保護規則)などの規制に従うことが重要です。これらの法令に違反すると、企業は罰金を科されるリスクがあります。法令遵守のためには、データの取り扱いに関するポリシーを明確にし、定期的な監査を行うことが推奨されます。
【導入事例】
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セキュリティ対策
AIシステムはサイバー攻撃の対象となることが多いため、セキュリティ対策は欠かせません。特に、AIモデルのトレーニングデータやアルゴリズムそのものが攻撃されるリスクがあります。これを防ぐためには、データの暗号化やアクセス制限、定期的なセキュリティチェックが必要です。
専門人材の採用や専門リテラシーを高める
AI技術は高度で専門的な知識を必要とします。そのため、専門人材の採用や既存スタッフの専門リテラシーを高めることが重要です。AIエンジニアやデータサイエンティストなど、専門知識を持つ人材を確保することで、AI活用の成功率が高まります。また、従業員全体のAIリテラシーを向上させるための研修や教育プログラムも有効です。
専門業者に活用をサポートしてもらう
AIの導入や運用には専門的な知識が必要であり、自社で全てを賄うのは難しい場合があります。その際には、専門業者にサポートを依頼することが有効です。専門業者は最新の技術やノウハウを持っているため、効率的かつ効果的にAIを活用することができます。
まとめ
本コラムでは、AIを活用する企業様へ向けて、AIのリスクについて解説してきました。
企業においては、AIを適切に活用することで、商品・サービスの発展や業務効率の向上も期待できますが、同時に多くのリスクもございます。そのため、業務に活用される際は、十分リスクに注意が必要です。
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