GENIACとは?
国内における生成AI開発力強化プロジェクトの参加企業・支援内容を解説

世界的に生成AIの利活用が進んでおり、その性能向上のスピードもめざましいものがあります。このような状況の中、日本国内の生成AIの研究開発や社会実装を加速させるため、「GENIAC(ジーニアック)」という国内における生成AI開発力強化プロジェクトが発足しました。

今回は、GENIACの概要からプロジェクトの目的、支援内容と参加企業、GENIACを活用するメリットなどを解説します。生成AIの利活用に興味のある企業は注目です。

GENIACとは?

GENIACとは、「Generative AI Accelerator Challenge」の略称で、2024年2月に経済産業省とNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が立ち上げた国内における生成AIの開発を強化するプロジェクトです。国内の関係者の知見を結集し、日本の開発力向上を目指します。

GENIACプロジェクトの目的

国がGENIACを立ち上げた目的は、日本国内の生成AI基盤モデルの開発力を底上げし、企業の創意工夫を促すことにあります。

生成AIは創造的な作業を人間に代わって行えることから、今後も産業活動や人々の生活に大きなインパクトを与えることが期待されている一方で、国内には生成AI発展のカギを握る基盤モデルの開発力がまだ乏しい現状があります。

そこでGENIACでは、計算資源の提供支援やデータや生成AIの利活用に向けた実証の支援、マッチングイベントの開催、グローバルテック企業との連携支援などを通じて、日本の基盤モデル開発力を抜本的に強化し、イノベーションを促進することを目指しています。

GENIACプロジェクトの支援内容

GENIACプロジェクトでは、次のような支援内容が計画されています。

計算資源の調達支援

生成AIの開発には計算資源が必要であるため、その調達支援を行います。計算資源とは、AIによる処理などに求められるコンピューターの処理能力やストレージ、ネットワークなどの基盤技術を意味します。生成AIには膨大なデータを高速・効率的に処理する計算能力が必要不可欠であり、主にGPUは開発の中心となります。

データの利活用支援

生成AIを開発するにはデータを学習させる必要がありますが、どのデータをどのように用いるかについても専門的な知見が必要です。
国内では、米国などの先進的な生成AI開発国と差別化を図るためにも、専門分野に特化した生成AIの開発に力を入れることが、一つの方向性として検討されています。そこでインターネット上ではなく、企業などが保有するデータの学習により専門分野に特化させるなどの方法が考えられています。

ナレッジシェアを行うコミュニティ活動支援

開発力の底上げのために、GoogleやMetaなどのエンジニアを迎えたセミナーや、スタートアップが開発における課題やナレッジをシェアしながら学び合える勉強会、事業会社とのマッチングイベントなどの開催を通じてコミュニティ活動の支援を行っています。

GENIACプロジェクトの参加企業

GENIACプロジェクトに参加している企業(2025年10月初旬時点)は次の24社となります。それぞれAIに関する先進的な取り組みをご紹介します。

・株式会社ABEJA
AI導入支援のための基盤システムの開発・導入・運用等を行う。

・株式会社AIdeaLab
AI議事録サービスやAIアバターなどを開発・提供する。

・AI inside 株式会社
生成AI・LLM(大規模言語モデル※1)、自律型AIの研究開発と社会実装を行う。
※1 LLM:Large Language Models、大規模言語モデルのこと。高度な言語理解を実現し、多様な自然言語処理のタスクに対応できる。

・Airion株式会社
製造業界へのAI導入を進め、産業構造の変革を目指す。

・Degas株式会社
AIと衛星観測データを活用し、発展途上国の課題に取り組む。

・Direava株式会社
AIによる外科手術などの術中支援技術の開発に取り組む。

・株式会社Kotoba Technologies Japan
世界に先駆け、音声における基盤モデル技術の研究開発を行う。

・NABLAS株式会社
AI人材育成、AIエージェント社会実装支援、生成AIサービスなどによる社会課題の解決に取り組む。

・株式会社NexaScience
エンタープライズの研究開発とその成果を利活用するAIプラットフォームを提供する。

・Nishika株式会社
国内初のオフラインAI議事録ツールを開発し、政府機関などにも提供する。

・ONESTRUCTION株式会社
建設業界におけるデータとAI活用のDXを推進する。

・株式会社Preferred Networks
産業領域でAI技術のバリューチェーンの垂直統合による高度なソリューションなどを開発・実装する。

・Sansan株式会社
営業DXサービスや名刺アプリなどを通じて働き方を変えるDXサービスを開発・提供する。

・SDio株式会社
TV放送データをマルチモーダルでリアルタイムに解析するAIサービスを提供する。

・SyntheticGestalt株式会社
医薬品、化粧品など幅広い分野で新しい分子をAIで発明することを目指す。

・Turing株式会社
完全自動運転を実現することを目指す。

・Zen Intelligence株式会社
建設業界の施工管理業務の人手不足や属人化の課題解決に取り組む。

・アリヴェクシス株式会社
独自の低分子創薬ポートフォリオと研究開発提携を推進する。

・カラクリ株式会社
カスタマーサポート特化型AI SaaSを開発・提供する。

・ストックマーク株式会社
AIエージェントなどの生成AI技術で企業変革を進める。

・株式会社野村総合研究所
実用的な生成AIソリューション開発・提供、コンサルティングなどワンストップで支援する。

・株式会社プレシジョン
AI問診などの診療支援サービスを提供する。

・楽天グループ株式会社
インターネット、フィンテック、モバイルなど多岐に渡る分野で70以上のサービス提供を行う。

・株式会社リコー
1980年代からAI開発に取り組み、自然言語処理技術からLLM、AIの基盤開発などを通じて企業をサポートする。

企業がGENIACを活用するメリット

企業がGENIACを活用することで得られる具体的なメリットをご紹介します。

業務効率化・生産性向上

GENIACの支援により、社内では不可能であった生成AIの開発・導入・運用などを通じて業務に変革を起こせる可能性があります。その結果、業務の効率化はもちろん、生産性向上にもつながるでしょう。

新事業創出

生成AI活用により、新たな事業を創出できます。これまでにないイノベーションを生み出す可能性もあるでしょう。

AIリテラシー向上

人材教育にも大きな影響をもたらしてくれます。GENIACの勉強会やセミナーなどを通じて従業員の生成AIをはじめとしたAIリテラシーが向上することが期待できます。

コンプライアンス・セキュリティに関するリスク対策

生成AIを活用するにあたって、懸念される著作権侵害や情報漏えいなどに対して、法令順守およびセキュリティ対策の支援が適切に行われます。

GENIACの今後のスケジュール・コミュニティの活動内容

GENIACを活用するためにも、今後のスケジュールと、コミュニティの活動内容を押さえておきましょう。

スケジュール

2025年8月中旬から生成AI基盤モデル開発の第3期を進めており、2026年2月で開発終了予定です。またデータに関しては、データ・生成利活用実証事業の第1・2公募を進めており、順次実証中です。

GENIACコミュニティの活動内容

GENIACには採択事業者以外の開発者も参加できるコミュニティが存在します。参加には審査と同意が必要ですが、次のような活動を行っているので、ぜひ参加してみましょう。

・有識者による勉強会・セミナー開催
・生成AI開発者の間での知見共有
・生成AI利活用企業と開発者のマッチングによる開発・利活用の促進

まとめ

GENIACというプロジェクトによって、国内の生成AI開発はさらに進んでいくものと考えられます。日本社会の生成AI環境がどのように発展していくのか、今後もプロジェクトの動向に注目が集まることでしょう。

リコーはGENIACの第2期、第3期の採択事業者であり、AI開発に取り組んでいます。

第2期では、2024年8月の公募「ポスト5G情報通信システムの開発(委託、助成)/計算可能領域拡大のための計算基盤技術開発(委託、助成)/競争力ある生成AI基盤モデルの開発(助成)」に採択され、企業内ドキュメント群を読み取るマルチモーダルLLMの本格的な開発を行いました。

また2025年7月には第3期においても採択され、企業内ドキュメント群について多段推論を行うことでより高精度に読み取ることができるリーズニング性能※2を持つマルチモーダルLLM(以下、リーズニングLLM)の開発に取り組んでいます。

※2 リーズニング性能:LLMの情報検索・テキスト生成だけでなく、複数のステップからなる論理的な思考プロセスを経て結論を導き出す性能。

リコー、国産生成AI開発強化プロジェクト「GENIAC」第3期においてリーズニング性能を持つマルチモーダルLLMの開発開始

リコー、経済産業省の国内生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」に採択

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