AIの台頭によって自治体の業務はどう変わる?
導入状況や導入メリット、課題と解決策を解説!
自治体では職員不足への対応や業務効率化のためにDXを推進しており、AI(人工知能)の活用も進んでいます。しかし、まだその活用の範囲は限定的といわれており、今後はさらに活用を促進していく必要がありそうです。
今回は、自治体におけるAIの導入状況からAIの活用用途、自治体におけるAI導入メリット、活用課題と活用促進アイデアをご紹介します。

自治体におけるAIの導入状況
自治体の生成AI導入状況と共に、AI導入が求められる背景についてご紹介します。
自治体のAI導入状況
総務省のデータにて自治体におけるAI導入状況を見てみると、都道府県・指定都市で100%、その他の市区町村は50%であり、実証中、導入予定、導入検討中を含めると約72%がAIの導入に向けて取り組んでいる状況があります(令和6年1月時点/1,788の都道府県・市区町村のうち)。
【出典】
総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和6年7月5日版)」
自治体の生成AI導入状況
また生成AIを導入済みの自治体は都道府県で51.1%、指定都市で40.0%、その他の市区町村で9.4%です。令和5年末時点の状況ですが、都道府県でもまだ半数に満たない状況です。
【出典】
総務省情報流通行政局地域通信振興課「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」(令和5年度12月31日現在)
自治体にAI導入が求められる背景
自治体にAI導入が求められる背景として、国内で深刻化する少子高齢化に伴う人手不足を背景とした、業務効率化の必要性が挙げられます。さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)を強く推進する必要があり、AIの導入が急速に進められています。
AIは人の作業の一部を自動化し、定型作業の代行や文案作成、データ分析などさまざまなタスクを担うことから、人手不足対応とDXの加速に役立っています。

自治体におけるAI活用用途
自治体においては、主に次の用途でAIが活用されています。
文書・議事録作成
何らかの文書を作成する際に、文案を生成AIなどが作成することで下書きの手間を削減します。また会議の内容を自動で文字起こしをしてまとめる議事録作成に利用されています。
チャットボットの問い合わせ対応
自治体のWebサイト上にチャットボットを設置し、住民からの問い合わせを無人で一次対応する試みが行われています。
自動電話音声対応
自治体に寄せられるごみ分別に関する電話問い合わせに対し、AIによる音声対話形式でサービスを提供している自治体もあります。
保育所入所選考
認可保育所の入所選考は複雑な要素があり、選考に膨大な時間がかかる課題に対し、AIが代わりに判断する複雑なルールをモデル化しています。
航空写真分析
固定資産税の対象となる家屋や土地利用の異動や変更を、AIによる航空写真の検出とデータ突合を実施し、課税客体把握事務の業務効率化を目指している自治体もあります。
【生成AIの活用例】先に示した総務省のデータでは、生成AIの活用例として多いのは、下記の用途でした。
・あいさつ文案の作成
・議事録の要約
・企画書案の作成
・ローコードの作成(マクロ、VBA等)
・メール文案の作成
・翻訳
・議会の想定問答の文案の作成
・住民等からの質問に対する回答案の作成
など
【出典】
総務省情報流通行政局地域通信振興課「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」(令和5年度12月31日現在)

自治体におけるAI導入メリット
自治体にAIを導入するメリットとして、次の点が挙げられます。
文書・書類作成の業務効率化
文書や書類作成時に文案をAIが提供してくれることから、ゼロから考える手間が省け、業務時間の短縮化や業務効率化につながります。
窓口業務や行政手続きの負荷軽減
AI搭載のチャットボットは、住民からの問い合わせの一次対応に活用できます。AIは精度が高い回答を返すことから、従来のチャットボットと比較して住民の利便性が向上するでしょう。その結果、窓口業務や行政手続きなどの職員対応の負荷が軽減されると考えられます。
住民満足度向上
AIを活用して住民サービスの利便性を高め、スピーディーに保育所入所選考結果が出たり、スムーズに申請などができるようになれば、住民の満足度が向上する可能性があります。
またAIによって業務が効率化し、ヒューマンエラーが低減することで、サービス品質向上も可能です。住民にとっては、従来感じていたストレスが軽減されるでしょう。
コストの削減につながる可能性
自治体職員不足がAIによって補えるようになれば、人的コスト削減につながります。また業務の工数が削減されれば、残業時間の削減につながるでしょう。AIには初期投資が必要ですが、長期的に見ればトータルコストを削減できる可能性があります。
行政の透明性向上
AIを活用して行政データの分析や可視化を行うことで、住民に対して正確な情報公開が可能になります。わかりやすい形で随時、行政サービスの進捗状況などを公開できれば、透明性を確保でき、住民からの信頼を獲得できるでしょう。

自治体におけるAI活用を促進するには?
自治体では近年、AIの活用が進まない課題に直面しています。具体的な課題と共に、活用促進のための方策について見ていきましょう。
自治体のAI活用課題
・ハルシネーションなどの問題により活用用途が限られる
ハルシネーションとは、生成AIが事実に基づかない誤情報を生成する事象を指します。また生成物は著作権侵害に該当する恐れがあるなど、複数のリスクを受け、AIの活用用途が限定的になることもあります。
・AI人材不足による運用面の課題
AIモデルの選定からシステム運用まで対応できる、AIに通じた人材がリーダーとして運用していくことが欠かせません。しかしAI人材不足や職員のAIリテラシーの課題があります。
・セキュリティ問題
AIを活用する際に、個人情報や機密情報はどのように取り扱うかのルールを厳格に設ける必要があります。情報漏洩や不正アクセスから守る徹底した体制が求められます。
今後の方策
・RAGの活用
ハルシネーション対策には、RAGの活用が有効です。RAGとはRetrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)を指し、特定のデータセット(データの集合体)を参照して情報を生成する技術です。そのため、自治体独自のデータを参照するようにすれば、より精度の高い回答が得られるようになります。
・AI利用ガイドラインの策定
情報漏洩や著作権侵害のリスクに対しては、AI使用上のルールを定めたAI利用ガイドラインを策定することが対策の一つとなります。AIツールに個人情報は入力しない、人の目で最終チェックを欠かさないなど適切な内容を盛り込みましょう。
・民間企業の支援によるセキュリティ体制の強化
AIの専門家のいる民間企業の支援を受けることで、さまざまな課題を解決でき、セキュリティ体制も強化できます。安定した環境が作られれば、AI利用促進につながるでしょう。

まとめ
自治体でのAI活用の用途は広く、業務効率化および生産性向上の可能性は高いものといえます。AI活用が進まない課題については、民間企業の支援や利用ガイドラインの策定、セキュリティ体制の構築などを通じて対応することができます。
自治体へのAI導入をご検討の際は、ぜひリコーにご相談ください。
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※LGWAN(Local Government Wide Area Network)とは、日本の地方自治体が利用する閉域ネットワークの略称です。このネットワークは主に、庁内の情報システムや電子申請サービス、データ共有などの行政サービスで活用されています。