コラム COLUMN

生成AIで作成した文章や画像の著作権はどうなる?
トラブル防止のためのポイントを解説

ここ数年で企業における生成AIの導入が急速に進みましたが、その活用方法や用途などはまだ模索段階といえるのではないでしょうか。その中でも、社内で安全かつトラブルなく利用するために、著作権にまつわる知識を押さえておくことは重要事項の一つといえます。

今回は、生成AIで生成されたコンテンツを使って文章や画像を作成する際の著作権について、著作権侵害になった判例を交えて解説します。また著作権侵害を回避するポイントも合わせてご紹介しますので、ぜひご覧ください。

1. 生成AIで作成したものの著作権はどうなる?

生成AIは多様なコンテンツを生成できますが、その生成した文章や画像などの著作権はどうなるのか、気になっているのではないでしょうか。生成AIの概要から確認していきましょう。

●生成AIとは?できること

生成AIとは、入力した指示文に応じて新たに文章や画像、動画などを生成できるAI技術の一種です。従来のAIと比較して、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる技術により自らデータを学習し、それを元に多様なものを生成することが特長です。

そのため、さまざまな業務に導入されており、アイデア出しや文章や画像作成、翻訳、議事録作成、情報収集、データ分析などに多用途に活用されています。

●生成AIで作成したものの著作権は?

生成AIに指示すれば、簡単に文章や画像などを作ることができます。とても便利で制作時間を大幅に省けますが、注意しなければならないことがあります。それは、著作権の問題です。

生成AIで制作したコンテンツは、利用方法によっては著作権侵害に該当することもあります。なぜなら、生成AIが、著作権が発生する、いわゆる「著作物」を含むデータを学習していることもあるためです。その著作物を含むデータをもとに生成したコンテンツは、著作権侵害に該当する恐れがあります。

生成AIで作成したものの著作権はどうなる?
2. 著作権とは?生成AIによる生成物との法的関係

そもそも、著作権とはどのような権利なのでしょうか。改めて理解しておきましょう。

●著作権と著作権法とは?

著作権とは、人が創作した著作物に関する権利です。著作権は著作権法により保護されています。著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したもの」であり、具体的には文芸、学術、美術、音楽などを指します。

著作権には、著作物を作った人=著作権者の人格を守るための権利と、著作権者が著作物についての使用料を受け取ることができる権利の2つがあります。

●著作権侵害とは?

文章や画像、映像、音楽などの作品には著作権があり、それらを著作権者に許可なく勝手にコピーして販売したり、インターネット上でホームページやSNSで勝手に掲載したりすると、著作権侵害に該当します。

誰かが作った作品やコンテンツには基本的に著作権があり、取り扱いに注意しなければ、著作権侵害に該当する恐れがあります。

著作権侵害の要件として、次の2つの両方を満たすことが必要とされています。

1.類似性:著作物と同一、または類似している
2.依拠性:既存の著作物に依拠して複製などが行われた

著作権侵害に対し、著作権者は侵害された行為の停止や予防措置の請求、侵害によって被った損害の賠償請求などが可能です。また、著作権侵害を行った場合、刑事罰の対象ともなります。

●AI生成物の利用が著作権侵害に関わる可能性があること

AIが作ったものは、基本的に著作権はありません。著作権は人間に対して与えられている権利だからです。しかし生成AIが生成したコンテンツを利用する場合、著作権侵害になる恐れがあります。AIと著作権が関わるのは、次の2つの段階に分かれることが、文化庁の資料で示されています。

1.AIの開発・学習段階AIを開発する際には、まず著作物や非著作物を学習用データとして収集・複製し、学習用データセットを作成した後、それをAIに学習させ、生成AIモデルを作るのが一般的です。このとき、目的は「AI開発」であることから、「著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用行為」であるため、原則として著作権者の許諾なく利用が可能です。
ただし、必要と認められる限度を超えたり、著作権者の利益を不当に害する場合は、著作物の利用は認められません。

2.生成・利用段階AIを利用して文章や画像を生成し、それらをインターネット上にアップロードして公表したり、生成した画像を複製したものを販売する行為は、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの通常の場合と同様に、著作権侵害になっていないかが問われます。例えば生成AIが作成した画像について、世の中にある画像に対して「類似性」と「依拠性」の両方の条件がそろっている場合、著作権侵害に該当する恐れがあります。

よって、生成AIで生成したコンテンツを広告やSNSにアップロードして公表したり、商品パッケージに印刷して販売したりする際には、著作権侵害にならないかを十分注意しなければなりません。

3. 生成AIの生成物が著作権侵害になった事例

生成AIの生成物を利用する際、どのような場合に著作権侵害となるのか、具体的なケーススタディを行っておくとよいでしょう。生成AIの生成物の利用が著作権侵害の判決が下った事例を見ていきましょう。

1.AIの開発・学習を行う段階の事例海外の事例です。ある企業が、AIの開発・学習を行う際に、ある新聞社の記事を無断で生成AIの訓練データに利用しました。そして記事の内容を複製したり、要約したりする機能をサービスとして提供していました。それを受け、新聞社は著作権侵害だと訴えましたが、訴えられた企業はフェアユース(公正利用)の範囲内であると主張しました。
AIの開発・学習を行う段階においては、著作権侵害かフェアユースかという点が論点となっています。

2.生成・利用段階の事例ある海外企業は、日本の実在の作品に登場するキャラクターに酷似しているAI生成画像をネット上で配信し、著作権者である日本企業に著作権侵害だと訴えられました。裁判においては、生成物と原著作物との間に、類似性と依拠性が認められ、著作権侵害として認める判決が下されました。

生成AIの生成物が著作権侵害になった事例
4. 生成AIで作成したクリエイティブで著作権を侵害しないためのポイント

企業が生成AIを用いて作成したクリエイティブを業務に利用する際、著作権侵害にならないために、次のポイントを押さえておきましょう。

●生成AIの学習データの確認

生成AIが学習したデータに、著作物を含むかどうかを利用前に確認し、著作物が含まれる場合、生成物の取り扱いに注意しましょう。あらかじめ透明性の高い、信頼できるサービスを利用することも大切です。

●生成AIの学習データを社内データのみに限定する

企業が生成AIを、著作権をそれほど気にせず利用できるよう、著作物を含む学習データで造られた生成AIモデルを利用するのではなく、著作権が自社に属するデータや、著作権者からの使用許諾を受けた著作物などで構成されるデータを学習した生成AIモデルを利用するのも一案です。

●従業員の教育とルールの策定

生成AIを利用する際には、著作権のほか、情報漏洩や情報の正確性などさまざまな注意点があります。それらをまとめて社内に注意喚起するのに加えて、ガイドラインを作るなどしてルール化することも有効です。著作権については「生成AIで作成したコンテンツは、無断で社外に公表・配信しない」「生成物が既存著作物に類似しているなど、著作権侵害にならないか調査・検討する」などのルール策定が考えられます。

●場合によっては許諾を得ることも考える

AI生成物が既存著作物と類似していた場合、それを商用利用する際には、著作権者に許諾を得る必要があります。場合によっては、このように許諾を得ることも考えましょう。

5.まとめ

生成AIを業務に活用する際には、著作権侵害にならないか、注意して進めることが重要です。従業員の教育とルールの策定はもちろんのこと、生成AIの学習データを社内データのみに限定するなどの対策を講じましょう。

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