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最終更新日:2025年9月18日

顧客体験(CX)とは?
重要視される背景や向上のポイント、最新のAI活用法まで徹底解説!

顧客体験とは、顧客が商品やサービスを購入する前から、購入した後に経験する体験すべてを指します。昨今、顧客体験の重要度が高まっているといわれていますが、それはなぜなのでしょうか。この記事では、なぜ顧客体験が重要視されるようになったのか、顧客体験を向上させるポイントについて解説します。ぜひ参考にしてください。

1. 顧客体験(CX)とは?

顧客体験とは、顧客が経験するすべての体験のことです。具体的には、商品やサービスに興味を持った段階から購入前、購入したとき、商品を利用した段階、利用後というように、商品などに顧客が触れる中で得られる体験を指します。また、体験を通して顧客が企業に持つ評価も顧客体験と呼ばれます。

従来から、顧客満足度を意識した施策や顧客サービスなどは行われてきました。しかし、これらはトラブルやクレームを防ぐ対策、接客の向上など部分的な施策に重きが置かる傾向にありました。一方、顧客体験では、商品を知った段階から購入、アフターサービスというように、部門や部署を超えトータル的な施策やサービスを提供します。

商品と顧客が接点を持つすべての段階で満足度の高いサービスを提供することにより、ロイヤルティの向上が見込めるでしょう。

顧客体験における経験価値の分類

顧客体験は、5つの経験価値に分類されます。
Sense(感覚的価値) 感覚を通して得る価値のことです。視覚や味覚、聴覚といった五感で得られるもので、たとえば「料理のおいしさ」や「音楽の心地よさ」「手触りのよさ」というように、感覚的によいと感じられるものや体験を指します。
Feel(情緒的価値) 顧客の感情面を動かすことによって得られる価値のことです。商品やサービスに触れて、顧客が思う感情、たとえば「感動した」「かわいい」「安心感がある」というように、内面に働きかけるようなサービスの提供によって得られます。
Think(創造的・知的価値) 顧客の知的好奇心や創造性、知的欲求などに働きかける価値のことです。たとえば、「商品の仕組みなどに強く興味を引かれる」「好奇心が満たされる」「自分を高められる」というように、知的欲求を刺激し満たす経験を指します。
Act(行動、ライフスタイルにかかわる価値) 「ライフスタイルに変化がある」「これまでにはない体験」というように、行動することで新しい価値を生み出すのがActです。たとえば、新しい習い事や新技術の体験、体験型のアクティビティなどがActにあたります。
Relate(準拠集団への帰属価値・社会的経験価値) 特定の集まりに所属することによって得られる価値のことです。たとえば、アイドルやバンドなどのファンクラブへ入会する、何らかの愛好家のイベントへ参加するなど、特別感のある経験をすることで得られます。

顧客が求める体験価値とは?

顧客体験を高めるには、顧客が求めている体験価値を把握することが重要です。顧客が求める体験価値は以下の5つの要素に分けられます。

・RELEVANCE:私向けのものだと思える
・EASE:私にとって意味がある
・OPENNESS:オープンで、正直である
・EMPATHY:私の立場で考えてくれる
・EMOTIONAL REWARDS:いい気分にさせてくれる

顧客は商品やサービスだけでなく、企業のメッセージや姿勢、ブランドや商品を選ぶ意味や価値があるかなどを重視します。また、顧客を大切に扱うことも重要です。

【出典】
C Space Japan「顧客体験価値(CX)ランキングTM2020」|ADF

2. 顧客体験が重要視される背景

顧客体験の重要度が高まっています。ここでは、顧客体験が重要視される背景について解説します。

顧客接点数が増加・複雑化している

情報通信技術が発展したことや、デバイスの進化によって顧客と企業の接点は増加しています。パソコンやスマホ、タブレットなどを使って商品や企業について調べることは当たり前になり、SNSなどで口コミを収集するケースも多いでしょう。

また、企業からの情報発信だけでなく、消費者個人の情報発信もしやすい状況です。ブログやSNS、口コミサイトなどを通じて、商品やサービスの情報を投稿するなど、消費者の情報発信力は大きくなっています。

企業からの情報発信や広告だけでなく、消費者自らが情報を得られるようになったことで、顧客と企業との接点は増加・複雑化しています。そのため、顧客体験を高めてロイヤルティ向上を目指すことが重要です。

データ取得・活用の技術が発展している

IT技術の進歩によって、顧客に関するさまざまな情報を詳細に取得できるようになりました。たとえば、どのようなルートで流入して購買に至ったのか、顧客の位置情報、顧客の購買情報など多くのデータの取得が可能です。

顧客に関するより細かな情報を得られるようになったことで、顧客にあわせた商品設計・サービスの機能向上などが実現できます。接客などにも活かせば、同業他社との差別化にもつながります。

「コト消費」や「トキ消費」にシフトしている

技術が成熟化しているため、商品そのものの価値やスペック、サービス内容などでは差別化が難しい時代です。画期的な商品であっても、すぐに類似品が現れて価値が低下してしまうといった課題もあります。また、顧客側としても「モノの価値」より「体験」を重要視する傾向が強くなっています。

商品そのものの価値を求めるのではなく、商品を購入する前や購入した後、アフターサービスなどすべての段階で満足できるかどうかといった、精神的充足が重視される傾向が高いです。また、そのときしか味わえない体験を求める傾向も強まっています。

継続利用により収益をあげるビジネスモデルが増加している

従来は、商品やサービスを販売して終わりというビジネスが主流でしたが、継続利用によって収益をあげるビジネスモデルが増えています。たとえば、買い切りではなく定期利用するタイプのサブスクリプション型、音楽配信や動画配信、クラウド上でソフトウェアを利用するサービスなどが、ビジネスモデルとして挙げられます。

消費者側には初期投資が安く済みモノを持たずに済むというメリットがあり、企業側としては長期的な売上が期待できる点がメリットです。継続利用してもらうには、長期的に良好な関係を保つための施策が重要になります。

3. 顧客体験の向上で期待できる効果

顧客体験の向上は、単に顧客満足度を高めるだけでなく、企業の成長に直結する多様な効果をもたらします。優れた顧客体験を提供することは、変化の激しい現代市場において、競争優位性を構築するための重要な経営課題と言えるでしょう。

第一に挙げられるのが、顧客ロイヤルティの向上です。満足度の高い体験をした顧客は、製品やサービスへの愛着を深め、リピート購入してくれる優良顧客へと成長する可能性が高まります。この結果、LTV(顧客生涯価値)が向上し、安定的な収益基盤を支えます。

第二に、ブランドイメージの強化と差別化です。ポジティブな顧客体験はSNSなどでの好意的な口コミを生み出し、企業の信頼性を高めます。価格競争に陥ることなく、「この企業だから選びたい」という独自の価値を提供できるようになることで、事業全体のブランディング活動を強力に支援する要素となります。

そして、これらの効果は最終的に収益性の向上に繋がります。リピート顧客の維持は、新規顧客を獲得するよりもコストを抑えられるため、利益率の改善に貢献します。顧客との良好な関係は、アップセルやクロスセルの機会創出にも繋がり、顧客単価の上昇も期待できるでしょう。

4. 顧客体験向上のための戦略的アプローチ

優れた顧客体験を設計するためには、まず顧客の視点に立ち、自社との関わりを時系列で深く理解することが不可欠です。そこで有効なのが「カスタマージャーニーマップ」の作成です。

顧客接点(タッチポイント)の洗い出しと感情の可視化

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品を認知し、興味を持ち、購入、そして利用後のサポートに至るまでの一連のプロセスを旅(ジャーニー)に見立てて可視化する手法です。各段階における顧客の行動、思考、感情、そして企業との接点(タッチポイント)を詳細に洗い出します。この客観的な結果より、これまで気づかなかった課題や、顧客が不満を感じやすいボトルネックが明確になります。例えば、「Webサイトの情報は分かりやすいが、購入後の問い合わせ対応に時間がかかっている」といった具体的な課題を発見できます。

データに基づいたマップの作成と更新

このマップは、憶測で作るのではなく、アンケート調査やアクセス解析、顧客インタビューといった客観的なデータに基づいて作成することが重要です。顧客の行動や期待は変化するため、一度作成して終わりにするのではなく、定期的に見直し、常に最新の状態に更新していくことで、一貫性のある質の高い顧客体験を提供し続けるための羅針盤となるでしょう。

5. 顧客体験を向上するためのポイント

顧客体験を向上させるには、以下で紹介する4つのポイントを押さえましょう。

現状の顧客体験を正しく把握する

はじめに、「情報収集」「購入」「利用」の3つの流れに分けて顧客と企業の接点を洗い出し、時系列に並べます。顧客体験把握は、企業の目線ではなく顧客側に立って考え、項目を洗い出すことが重要です。

また、カスタマージャーニーマップの活用も効果的です。カスタマージャーニーマップとは、顧客の購買行動や考えなどを細分化してプロセスごとに並べたマップを指します。

NPSなどのデータを活用することもポイントです。NPSは現在の顧客体験を数値化するもので、高ければ高いほど顧客からの満足度が高くなります。また、チャットボットのデータもマーケティングに利用できます。このように、さまざまなデータを活用しながら顧客体験を把握しましょう。

それぞれの接点において課題を明確化する

顧客と企業の接点を洗い出し時系列に並べたら、各接点における課題を明確にしましょう。課題をみつける際に気を付けたいポイントは以下のとおりです。

・各接点で、顧客それぞれの事情を考慮した課題であるかどうか
・各接点で、顧客の潜在的なニーズ・要望に目を向けているかどうか
・各接点で、顧客からの期待を超える価値を提供できているかどうか

顧客体験を高めるには、顧客が自覚しているニーズを満たすだけではいけません。潜在的なニーズを満たし、期待を上回る価値を提供することが重要です。また、継続して利用している人だけでなく、利用をキャンセルした人の意見・情報も参考になります。不満点を分析し、課題のあぶり出しに役立てましょう。

仮説を立て、検証や改善を繰り返す

課題を明確化したら、仮説を立てて検証・改善というサイクルを繰り返していきましょう。課題をさらに明確にするには、顧客インタビューやアンケートなどが効果的です。より明確になった課題をもとにして、改善施策を立案→実行→改善を行っていきましょう。一度だけでなく、このサイクルを回してしっかり検証することが重要です。

一部の部署だけではなく全社で取り組む

顧客体験は、商品そのものの価値や利用時だけでなく、すべての段階が対象です。そのため、どこか1つでも期待を裏切ってしまうと評価が大きく下がります。たとえば、商品自体に満足しても接客時の対応が悪い、アフターサービスが充実していないなど不満点があると、顧客体験は向上しません。

特に、部署をまたいで対応する必要がある場合、顧客体験が低下することが多いです。部署間の連携や意識を共有するなど、対策が必要になります。

6. チャットボットを導入することで顧客体験の向上に成功した事例

国内外で教育研修を行う株式会社アイエスエイでは、潜在的ニーズの把握が難しい、問い合わせの前に顧客との接点を設けたい、WebサイトのCV数を高めたいという課題がありました。チャットボット導入により、3カ月で2,000件と気軽に利用できる接点として効果を発揮しています。チャットボット経由で申し込みや予約なども増えCV数が向上する、潜在的ニーズの把握に役立つといった効果もあります。

また、健康管理食品宅配サービスを行っているメディカルフードサービス株式会社では、コールセンタースタッフの業務負荷軽減とお客様の利便性向上の実現が課題でした。チャットボットの導入により、少人数のスタッフで年間500件以上の問合せに対応可能となり、業務効率が大幅に向上しました。ホームページ上のチャットボットに、お客様が「糖尿病の食事はありますか?」などと尋ねると、商品が紹介されることなどにより、売上機会損失の低減にも効果がありました。

【参考】

7. AIを活用した顧客体験の最新トレンド

AI技術の進化、特に生成AIの登場により、顧客体験はこれまで以上にパーソナライズされた、人間らしいコミュニケーションの実現がトレンドとなっています。

その一つが、顧客の感情や意図を深く理解するAIの活用です。従来の分析では捉えきれなかったレビューや問い合わせ内容といった膨大なテキストデータから、顧客の隠れたニーズを発見します。この調査結果を基に、個々の顧客に最適化されたコミュニケーションを自動で開発・実施する動きが加速しています。

また、AIは従業員を支援する役割も担います。例えば、顧客対応中にAIがリアルタイムで最適な回答案を提示したり、複雑な問い合わせの要約を作成したりすることで、従業員はより質の高いサポートに集中できます。これは組織全体のサービス品質を底上げし、優れた顧客体験の構築に繋がります。これらの高度なAI活用を実現するには、散在するデータを統合し、活用するための基盤構築が不可欠と言えるでしょう。

8. まとめ

顧客体験とは、商品やサービスの購買前からアフターサービスまで、すべてのフェーズで顧客が経験する体験・価値のことです。顧客接点数の増加や複雑化、データ取得や分析記述などの向上などにより、顧客体験の向上が重要視されています。

たとえば、チャットボットの採用によって、問い合わせなどの顧客体験は向上する可能性があります。RICOH Chatbot Serviceは、導入が簡単で運用が楽にできるチャットボットサービスです。学習済みのAIを使用しており、表記ゆれを自動で吸収できます。また、サポートが手厚く、はじめてチャットボットを導入する企業にも向いています。チャットボット導入を検討しているのなら、お気軽にお問い合わせください。

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