顧客インサイトとは?把握するための具体的な分析・調査方法、成功事例について解説
顧客インサイトとは、顧客の潜在的な欲求です。顧客インサイトを明らかにすることで、購買意欲を刺激するサービス・商品を提供できます。この記事では、顧客インサイトについて検討している担当者に向けて、顧客インサイトの概要や把握するための分析・調査方法などを詳しく解説します。成功事例もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
顧客インサイトとは顧客自身も自覚していない潜在的なニーズです。パンを買う消費者を例に挙げます。パンを購入する消費者に「なぜこの商品を選んだのか」と聞き、「なんとなく」「いつも食べているから」といった回答しか得られない場合、この消費者の無意識下においては、商品を購入する裏の動機が隠されている可能性があります。
表面的な欲求ではなく、その裏にある本当のニーズを理解できれば、競合他社との差別化もしやすくなり、ヒット商品が生み出しやすくなります。顧客自身も自覚していない潜在的なニーズを理解するには、顧客インサイトの把握が不可欠です。
また、マーケティング戦略や製品開発、広告などの意思決定において重要な役割を果たします。
1-1. 注目される理由
現代は、さまざまな商品があふれています。高品質かつ手ごろな商品やサービスが豊富に揃っているため差別化が難しく、その中からヒット商品を生み出すことはなかなか困難です。また、多くの顧客は、なぜ自分がその商品やサービスを選んだのか、明確な理由を説明できません。どの商品を選んでもある程度満たされる時代では、顧客インサイトを見抜くことが重要になります。顧客が自覚していない欲求を把握し、商品開発や販売促進に取り入れられれば、購買意欲を刺激したマーケティングが可能となるでしょう。
1-2. 活用するメリット
顧客インサイトを活用するメリットについてご紹介します。1. 集客力の拡大 顧客の潜在的な欲求が把握できれば、顧客の問題解決に役立つサービスなどを提供できるようになったり、購買意欲を刺激できるマーケティングが可能になったりします。そのため、集客力の拡大が見込めるでしょう。
2. 顧客との良好な関係構築 顧客の潜在的な欲求に寄り添ったコミュニケーションも取れるため、良好な関係を築きやすくなり、リピーターの獲得にもつながります。
3. 新しいビジネスチャンスの獲得 顧客インサイトを理解できれば、その欲求を満たすような新しいビジネスモデルの構築も可能です。
4. 売上の拡大 顧客インサイトを活用し、顧客の購買行動や嗜好を理解することで、売り上げの向上やクロスセル・アップセルの機会を見つけることができます。
5. 競争力の強化 顧客のニーズに合わせた製品やサービスを提供することで、競合する市場の中で優位に立つことができます。
ニーズ(needs)とは、「顧客が必要としているもの・こと」です。ニーズは、多くの場合顧客自身が自覚しています。
ニーズには顕在ニーズと潜在ニーズの2つがあります。例えば、「コーヒーを飲みたい」という欲求があった場合、「コーヒーが好き」という心理は顕在ニーズに当たります。一方潜在ニーズは、「リラックスしたい」というように、顧客自身も気づいてない心理を意味します。顧客インサイトは、顧客自身が自覚していないニーズを、さらに深堀りすることで把握します。
ここでは、顧客インサイトを実際に活用して成功した事例を3つ紹介します。
日清食品
日清食品では、60歳以上の購入層が低迷しているという課題があり、新しいことに敏感な「アクディブシニア」に着目して顧客インサイトを調査しました。その結果、健康志向で食事に気を遣う一方、豪華な食事を食べていることがわかり、「健康のために美味しさを諦めたくない」という考えがあることを把握できました。この顧客インサイトを活かして、健康に配慮しつつプレミアム感のある商品を販売し、60歳以上の購入層の増加につなげています。
カリフォルニア牛乳協会
カリフォルニア牛乳協会では、「牛乳は健康によい」というメッセージでは、顧客に届きにくいという課題があり、「牛乳を買いたくなる瞬間」に着目して顧客インサイトを調査しました。その結果、「飲みたいときに牛乳がないとイライラする」というインサイトがみつかり、「got milk?(ミルクある?)」という広告キャンペーンを展開します。牛乳と一緒に食べたいパンやクッキーと、キャッチコピーだけの広告も展開し、牛乳の消費量回復を実現しています。
大戸屋ホールディングス
大戸屋ホールディングスでは、定食屋は男性がたくさん食べるための場所というイメージが強く、ターゲットである女性の集客をしにくいという課題があったため「1人での外食が苦手」という女性の心情に着目しました。その結果、「1人で店に入るところをみられたくない」というインサイトがみつかり、2階以上や地下に店舗を構えました。これにより、多くの女性客の集客につながっています。
4-1. データ収集する
顧客インサイトを把握するためには、「データ収集」・「分析」・「見抜く視点を持つ」という3つの手順が必要になります。実際に、各手順ではどのようなことをすればよいのでしょうか。ここでは、データ収集方法について詳しく解説します。
アンケート・インタビュー アンケートやインタビューは、顧客の声や本音などを聞ける方法です。アンケートはあらかじめ用意した設問に答えていってもらう仕組みで、効率的に回答を得られます。しかし、顕在ニーズの把握には役立ちますが、顧客インサイトは把握しにくくなっています。
インタビューは対談形式で質問する形式です。顔を合わせて行うため、反応や表情から顧客インサイトを探りやすくなります。しかし、事前に商品が売れない理由などの仮説を立てておかなければ、有益なデータを集めにくいでしょう。
ソーシャルリスニング ソーシャルリスニングとは、SNSから顧客の声を集める方法です。インターネットの普及によりSNSを利用している人は増加しており、個人でも情報を発信しやすくなっています。そのため、商品やサービスについての口コミ、満足したポイントや不満点などを投稿している人も少なくありません。
SNSでは、アンケートやインタビューなどではみつけにくいマイナスの意見もリアルタイムに収集できるため、幅広い意見を集められます。
ツール・システムの導入 Webサイトやカスタマーサポート、コールセンターなどには顧客からの問い合わせなどが集まります。ツールやシステムを導入し、実際の顧客からの声をデータとして収集できれば、商品やサービスの改善、開発などに役立ちます。
例えば、チャットボットを導入するのもよい方法です。コールセンターなどへチャットボットを導入すれば、問い合わせの履歴から顧客ニーズの把握につながります。これにより、商品開発につながった企業もあるなど、実際に成果も出ています。
4-2. 分析する
顧客インサイトを把握するには、分析も重要です。ここでは、分析方法について詳しく解説します。
ペルソナを設定する ペルソナとは、「架空の人物設定・モデル」のことです。ターゲットとなる人物像をより深く設定することをペルソナ設定といいます。例えば、名前や性別、家族構成から職業、趣味といった具体的な項目を設定し、イメージに落とし込みます。
ペルソナ設定をすることで、開発やマーケティングなどに関わる全員がイメージを共有できます。イメージを共有できれば、それぞれの段階で顧客視点に立った施策の立案も可能です。
共感マップを作成する 共感マップとは、ペルソナの状況や感情などを理解するためのマップです。以下の6つの要素を書き出しましょう。
・見ていること:影響を受けるメディアやSNS
・行動、発言していること:普段の発言や行動、所属コミュニティ
・聞いていること:周囲の声、メディアの情報
・考え、感じていること:普段の思考や言葉にしない思い
・顧客の痛み:問題やリスク、不安要素
・得られるもの:ニーズや成功基準
自社の商品やサービスが顧客のどのようなニーズを叶えられるのか、課題や問題を解決できるかどうかなどをイメージできます。
4-3. 見抜く視点を持つ
顧客インサイトを把握するには、固定概念にとらわれず柔軟な視点を持つことが重要です。ここでは、顧客心理を見抜く際の視点について解説します。
手段と目的を整理する 顧客がどのような手段を選ぶのかをみつけるだけでは、顧客インサイトの把握にはつながりません。なぜ、顧客がその手段を選ぶのかなどの目的を把握することが重要です。本来の目的は、顧客が抱えている課題であることが多いため、手段と目的を整理すれば、課題を根本的に解決するための商品やサービスの提供につながります。
現象から原因を見つける 顧客は、現象についてはアンケートなどで答えてくれますが、その原因については語りません。例えば、商品を2つまでしか買わないという現象があるとします。その場合、なぜ2つまでしか買わないのか、その原因は探る必要があります。「カゴを持たずに買い物するため」が原因だった場合は、カゴを複数個所に設置するといった解決策を取れます。
行動と心理の矛盾点を見つける 思考と行動に矛盾があるケースも少なくありません。矛盾していながらもつい選んでしまう、感情移入してしまうといったポイントがわかれば、新しい購買動機の発見につながります。例えば、前述した日清食品の例はこれに当たります。健康を気にしながらも、美味しさを諦めたくないという矛盾を見抜くことで、シニア層の購買増につながりました。
ネガティブをポジティブに変換する ネガティブな視点を、ポジティブ視点に変換させることも重要です。顧客から収集するデータは現象を語るケースが多く、ネガティブな意見に偏る場合もあります。しかし、ネガティブな意見も視点を変えれば、ポジティブにスライドできます。ネガティブな要素をポジティブな要素として売り出す方法もあるため、柔軟な視点で物事を捉えましょう。
普遍的な欲求に当てはめる 上記の方法で顧客インサイトがみつからない場合には、基本的な欲求に着目しましょう。基本的欲求とは、食欲や睡眠欲などのことです。基本的な欲求は、人の心理に強く影響を与えるといわれています。それぞれの欲求に対して、自社の商品やサービスが何を与えられるのかを考えてみましょう。
顧客インサイトを活用した代表的なマーケティング戦略の一例をご紹介します。
ターゲットとなるセグメントの特定
収集した顧客インサイトをもとに、顧客を異なるセグメントに分類します。例えば、年齢、性別、地域、興味関心、購買履歴などに基づいてグループ分けすることができます。カスタマージャーニーマップの作成
顧客インサイトの情報をもとに、カスタマージャーニーマップを作成し、顧客が商品やサービスを購入するまでのプロセスを可視化します。セグメントごとのアプローチ
セグメントに合わせたメッセージやコンテンツを作成することで、パーソナライズ化されたコミュニケーションを行います。リピート購買の促進
顧客インサイトを活用して、リピート購買を促進する施策を展開します。例えば、購買特典や会員限定の特典を提供することで、顧客のリピート率を高めることができます。顧客インサイトを把握するための手順として、データ収集方法について先ほど詳しく解説をしました。データ収集方法について、いくつか挙げましたが、ここではチャットボットを活用した顧客インサイトの把握方法について紹介します。
そもそもチャットボットとはWebサイトやアプリなどに組み込むことで、Web上でユーザーからの質問に自動回答を行うツールです。
チャットボットを導入するメリットとして、業務の効率化があげられますが、それ以外にも、コールセンターやカスタマーサポートに導入することで、顧客からの問い合わせやフィードバックの内容を蓄積することができ、その蓄積されたデータを分析をすることで、商品やサービスの改善、開発などにも役立たせることができます。チャットボットで収集できる情報には、顧客インサイトが隠れており、ユーザーが何を求めているのか、どういった行動をとるのかが把握ができ、さまざまな対応に繋げることが可能となります。
顧客インサイトとは、顧客自身も自覚していない欲求のことです。顧客インサイトを把握することで、購買意欲を刺激できるマーケティングが可能になります。顧客インサイトを把握するためにはさまざまな手法がありますが、ツールの導入もおすすめです。
例えば、チャットボットを導入すれば、問い合わせの履歴から顧客ニーズの把握につながります。
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