自治体でのチャットボットの活用例・導入事例を紹介
「チャットボット」は、「24時間365日問い合わせ対応を行うロボット」として知られていますが、自治体における活用方法にはどういったものがあるのか、よく知らないという人も多いことでしょう。そこで今回は、自治体でチャットボット導入が進む理由、導入によって得られるメリット、おすすめの自治体向けのチャットボットをご紹介します。
総務省が2018年に行った研究会「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告」(以下、研究会)にて、「人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか」という副題からも推測できるように、「現状の自治体の体制・仕組みでは、立ち行かない未来が待っている」ということが指摘されました。このような現状を受け、自治体におけるチャットボット導入が進んでいます。
研究会では、2040年頃にピークを迎える高齢者人口に対して、支える立場となる労働人口(20歳代前半)はその半分程度となるとした上で、「AI、ロボティクス、ブロックチェーンといった破壊的技術(Disruptive Technologies)を積極的に活用し、自動化・省力化で効率的に事務処理を行う体制構築が欠かせない」との見解が示されました。そこで、同時に言及されたのが、「住民・企業との接点の利便性向上」です。
利便性向上の欄には、「マイナポータルを利用した住民の電子申請」が一元的な窓口(インターフェース)として利用できる旨がつづられていますが、自治体におけるチャットボット導入も住民・企業の負担を軽減するものとして活用されることが想定されるため、「利便性向上の一端を担う」と解釈できます。以上のように、自治体におけるチャットボット導入の背景には、総務省の研究会に代表されるような「住民・企業との接点の利便性向上」の意図があり、国が進めるプロジェクトの一つとして、認識されているのです。
自治体では、主に次のような用途でチャットボットが活用されています。
●住民からの問い合わせの一次受付 ホームページ上やLINEなどのチャットツール上にチャットボットを設置し、そこから住民からの問い合わせを一次的に受け付ける方法です。チャットボットは24時間365日利用できるので、自治体の窓口が開いていない土日や夜間も受付が可能です。総務省の2018年の「AIの導入状況」の統計(※)では、チャットボットによる行政サービスの案内を行う市区町村は、全国のAIを導入済み市区町村106のうち、55と、半数以上を占めていました。実際、導入事例も多くあります。住民が普段利用しているLINE公式アカウントにチャットボットを設置することで利用ハードルを下げている事例もあります。
※出典:総務省「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000624150.pdf)
●情報発信 チャットボットは、情報発信ツールにもなります。ホームページは情報量が多いことから、住民にとって自分で検索するのは手間ですし、時間がかかるといった課題もありますが、チャットボットでは手軽に必要な情報を引き出すことが可能です。新型コロナ関連情報や子育て支援情報、地域・観光情報などの発信が考えられます。
●外国人対応 英語などの多国語に切り替えられる機能のあるチャットを導入すれば、日本語が母語でない住民への対応も可能となります。
●住民とのコミュニケーション チャットボットを通じて、アンケートを行ったり、有益な情報を提供したりすれば、住民とのコミュニケーション用途で利用することもできます。チャットボットで回答するロボットにキャラクター性を持たせ、マスコットキャラクターのようにして住民に親しんでもらっている事例もあります。
●自治体内のヘルプデスク 自治体の業務効率化のために、ヘルプデスクの一次受付のような形で機能させることも可能です。簡単なよくある質問であれば、チャットボットのみで解決も可能です。人手不足の問題がある中、自治体のヘルプデスク業務の支援ができます。
それでは、具体的にどのような自治体のチャットボット導入事例があるのかを見ていきましょう。以下の見出しでは、「福島県会津若松市」と「岡山県和気町」でのAIチャットボットの導入事例をご紹介します。
• AIチャットボットを活用した問い合わせへの自動応答サービス(福島県会津若松市)
• AIチャットボットを活用した住民サービスの充実(岡山県和気町)
両自治体に共通していた課題は、電話応対などのさまざまな問い合わせに対し、「担当職員が直接対応していた」という点です。そのため、担当職員が不在の場合や業務時間外に対応できないケースも多く、住民へのサービスが不十分になっていました。そこで、チャットボットを導入することで、さまざまな問い合わせに対し、「回答にかかるタイムラグ」をなくすことに成功しています。
【自治体の導入事例①】AIチャットボットを活用した問い合わせへの自動応答サービス(福島県会津若松市)
福島県会津若松市では、AI(人工知能)を活用し、市民からのよくある問い合わせや、各種証明書発行申請手続きの仕方などに対し、対話形式で自動応答するチャットボットをLINE上に構築しました。住民が普段使いするLINEの公式アカウントとしてサービスリリースされた結果、「24時間365日気軽に問い合わせることができる自治体窓口が完成した」といえます。段階的に追加されたサービスの中には、「休日・夜間診療への対応可否」「除雪車位置情報」などがあり、住民が生活する上で欠かせない情報が滞りなく提供されるようになりました。
【自治体の導入事例②】AIチャットボットを活用した住民サービスの充実(岡山県和気町)
岡山県和気町は、人口減少が進んでいる地域で、移住による人口増加を図るためのさまざまな施策が展開されています。しかし、施策の取り組みに比例して増えた「移住希望者からの問い合わせ」に対しては職員が担当していたため、職員の負担が増大していました。そこで導入されたのが、AIチャットボットの「わけまろくん」です。
AIチャットボットの「わけまろくん」には、和気町ホームページやLINE上からアクセスすることができ、いつでも移住に関する質問を行うことができます。質問への回答にタイムラグがなくなると同時に、質問のログがLINE上に残るため、「ユーザビリティの向上にも役立った」と報告されています。月30件程度だった問い合わせ数は、導入1カ月で5000件に増えたといいます。
自治体がチャットボットを導入することによるパフォーマンスの向上をご紹介しましたが、「チャットボットであれば何でも導入して良い」ということではありません。企業向けチャットボットがあるように、自治体向けチャットボットがあるのです。
自治体向けチャットボットとは、自治体における業務効率化や省人化を目的に開発された自動会話プログラムのことで、住民からの質問や問い合わせパターンをあらかじめ想定して構築されています。自治体向けチャットボットには、各自治体で既に用意されているFAQをそのままチャットボットに回答させるような仕組みが搭載されている他、AIの機械学習によってさまざまな質問に対する回答が行える機能も搭載されています。
自治体向けチャットボットを利用するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
• 24時間365日対応できる
• スムーズに導入できる
• 省人化を実現できる
• 窓口での密を防ぐことができる
• 外国語に対応できる
先述したように、自治体向けチャットボット導入のメリットの一つは、「24時間365日問い合わせに対応できる」という点です。チャットボットを導入すれば、担当職員がいない場合や業務時間外でも問題なく質問への回答を行うことができ、住民へのサービスを分かりやすい形で強化できます。また、自治体窓口では、住民が本来窓口に来て質問していた内容や、電話による問い合わせが減るため、同等のパフォーマンスを少ない人数の職員で対応できるようになります。
24時間365日対応できる
24時間365日問い合わせ対応ができることは、チャットボット導入の大きなメリットであるといえます。自治体ホームページで随時FAQを追加している自治体も多くありますが、「ホームページは情報過多である」として、参照しない住民がいることも想定しなければなりません。毎日似たような質問に対して応答している状況があるなら、「チャットボットを通じた応答の自動化」を検討しましょう。
スムーズに導入できる
企業が提供する自治体向けチャットボットは、さまざまな自治体から寄せられた実際の質問パターンや意見を反映しているため、AIの学習スピードアップが期待できます。また、サーバー設定が不要であるなど、スムーズに導入するための工夫が施されています。
省人化を実現できる
チャットボットの導入によって、業務時間外での応答が可能になることをご説明しましたが、業務時間内における省人化の実現も期待できます。具体的には、電話応対数の減少、窓口業務の減少などが想定されます。
窓口での密を防ぐことができる
チャットボットが住民からの問い合わせをスムーズに行うことで、自治体窓口における対応数の減少が期待でき、密を防ぐことができます。自治体窓口でしか対応できない手続きを滞りなく行うためにも、チャットボット導入は必要であるといえるでしょう。
外国語に対応できる
外国人を多く受け入れている自治体では、外国人向けのサービス強化のために、外国語が話せるスタッフを採用することがありますが、「適任者がなかなか見つからない」などといった問題を抱えているところも多いのではないでしょうか。チャットボットを導入しただけでは、外国人向け自治体サービスが十分であるとはいえませんが、外国語対応が可能で、いつでも質問できるインターフェースとしてチャットボットを導入することは、サービス強化の一つとなるでしょう。
自治体向けチャットボットを導入する際の費用に関してご紹介します。
費用の項目
まず導入することでかかる費用の項目については、主に次のものが挙げられます。
・初期費用・月額料金クラウドサービスなどのチャットボットサービスを導入する場合、契約時に初期費用と月額料金が発生するのが一般的です。月額料金は、チャットボットを設置するユーザーの訪問数やチャットボットへの質問数によって変動するケースもあります。
また、AI型のチャットボットであれば、その他の種類よりも月額料金が高額になることが多いので、チャットボットの種類を選定するときには気に留めておきましょう。
・オプション料金チャットボットサービスには、オプションを契約できるところも多いため、オプションを付ける場合は追加で料金がかかってきます。例えば、一般的なサポートのほか、チャットボットのQ&Aデータの作成が委託できるオプションや、有人対応への誘導や外部システムとの連携機能のオプションもあります。
費用相場
費用相場は、種類のほか、製品や機能によっても異なります。
チャットボットにはAI型の他に、ルールベース型というものがあります。ルールベース型は、あらかじめシナリオや辞書を登録しておき、ユーザーに対してその登録データよりシナリオに沿った情報提供や、質疑応答を実施することができる種類です。それぞれの種類によって、およそ次のような費用相場となっています。
・ルールベース型(シナリオ型・辞書型)初期費用:無料、5万~10万円程度
月額料金:月額10万~30万円程度
・AI型初期費用:20万~100万円程度
月額料金:月額30万~100万円程度
どれを選択すべきかは、自治体ごとにチャットボットの導入目的や予算によって変わってきます。費用相場は、選定の際の参考として検討してください。
自治体でも導入が進んでいるAIチャットボットについてご紹介します。
AIチャットボットとは
AIチャットボットとは、AI(Artificial Intelligence/人工知能)が搭載されているチャットボットです。蓄積されたデータをもとにAIが自己学習し、ユーザーへの回答を自動で行うため、蓄積されたデータ数が多いほどユーザーへの回答精度も高くなることが特徴のチャットボットになります。
自治体でのAIチャットボットの活用事例としては、外国人居住者の多い地域で、多言語での対応が可能なAIチャットボットを活用し、外国人向けの情報発信を行う事例などがあります。その他にも、質問内容の分析を行うことで、外国人居住者がどのような情報が知りたいのかを把握することができ、よりユーザーのニーズにあった情報発信が可能となります。
自治体がホームページにチャットボットを導入することにより、さまざまな効果が期待できます。
その主な効果をご紹介します。
●子育て支援情報の発信により「子育てしやすい」市区町村となる
チャットボットを利用してホームページ上から子育て支援情報を発信することで、子育て中の保護者が、より手軽に子育て関連情報を入手できることから、「子育てに優しい」「子育てしやすい」市区町村になります。これにより、自治体としては少子化対策の一助となり得ます。
●観光情報の提供により誘致につながる
外国人観光客をはじめとした観光情報の発信をチャットボットで行うことで、地域への観光誘致につながります。経済効果UPや地域活性化の効果も期待できるでしょう。
●業務効率UP・人手不足の対策となる
先述の通り、チャットボットで省力化が実現することで、業務効率UPや人手不足課題の解決につながります。
●住民とのコミュニケーションの一手段となる
これまで問い合わせについてハードルが高いと感じていた住民も、チャットボットならハードルが下がり、問い合わせがしやすくなると考えられます。利用が増えるようであれば、住民との接点が増え、コミュニケーションも多くなります。より住民とのつながりを密に持ちながら、自治体業務の運用を行っていくことができます。
●住民の声を業務に活かせる
チャットボットの過去ログには、住民の本音が隠れていることもあります。そこから新たなサービスを提供することができることもあります。自治体業務に対して、住民の声をより反映させることができるでしょう。
自治体向けチャットボットといっても、特徴とするポイントや、得意とする業務がそれぞれ異なるため、各自治体の状況に合わせたチャットボット導入が欠かせません。今回は、多くの自治体に選ばれているリコーのチャットボットをご紹介します。
RICOH Chatbot Service
出典:リコージャパン株式会社 RICOH CHATBOT SERVICE
リコージャパン株式会社では、独自の技術を使ったAIによる学習済みのチャットボットをご提供しています。
Excelで作成したデータをそのまま使用できるため、専門知識がなくても、簡単に運用を始められます。
また管理画面は、グラフィカルなUIで構成されているため、問い合わせ内容を手軽に可視化でき、利用者の声を反映しやすいという特徴があります。
更には、自治体向けのQ&Aテンプレートや外国人対応に向けた多言語自動翻訳機能*もご用意しています。
(*エンタープライズプラン対応)
サンプルページ(自治体向けQ&Aテンプレート)
自治体のチャットボット導入事例(大阪府消費生活センターさま)
自治体におけるチャットボット導入は、総務省が実施した研究からも分かるように、緊急性の高いものであるといえます。現状の体制や仕組みから、AI・ロボティクスを活用した効率的な事務処理を行う体制へと、変化を遂げる必要がありますが、導入には思いの外、コストが生じてしまいます。チャットボットは、「AI・ロボティクスと比べて導入・運用コストが低い」というメリットもありますので、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
RICOH Chatbot Serviceの自治体での活用シーン
チャットボットお役立ち資料
RICOH Chatbot Serviceのサービス資料はもちろん、
導入事例集、チャットボットの基礎知識が学べる資料など
チャットボットに関する様々な資料をご用意!
是非、ダウンロードして御覧ください。
以下のような資料をご用意しています。
- チャットボットの種類とそれぞれのメリットデメリット
- チャットボットサービスを正しく賢く選ぶコツ
- RICOH Chatbot Service 導入事例集
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